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イオン、全国の店舗のレジにATM機能…銀行の店舗に行く必要消失

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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 すでにイオンは、傘下のイオン銀行を通して銀行業務に進出してきた。イオン銀行は、既存の銀行に比べて新しいテクノロジーの取り込みに意欲的だ。11月には、生体認証技術を手掛けるベンチャー企業と組んで、指紋認証などによる本人確認のサービスを開始した。これはキャッシュカードを必要とせず、“手ぶら”で預金を引き出す、あるいは口座を開設する取り組みだ。

 こうした新しいIT技術の導入のなかでも特にインパクトが大きいのが、分散型のネットワーク技術の実用化である。ブロックチェーンなどの導入が進むと、小売業と金融ビジネスの融合は加速すると考えられる。

 将来の展開を考えた時、次のようなストーリーが考えられる。イオンの各店舗には、同社のシステム(ブロックチェーン)にアクセスできる端末が設置されている。店舗内のレジ全体での預金の入金と出金の額を合計して、ブロックチェーンに入力すれば、その時点でイオン銀行全体での預金額を管理することができる。預金だけでなく、レジでは通信販売などの代金を振り込むこともできる。レジにATMの機能を持たせようとする発想は、より強くなるだろう。

 分散型のネットワークシステムを使うと、今日のように一カ所に大きなサーバーを設置し、多額の費用と人手をかけてメンテナンスを行う必要性は低下する。その結果、IT関連のコストが減少し、さらなるサービスの改善につながるだろう。

常識の通用しない社会の到来

 
 このように、新しいテクノロジーの導入が進むに伴い、金融、小売り、製造業というように、既存の業種の境界はあいまいになっていくだろう。テクノロジーが企業に異種混合の業態を志向させるといっても過言ではない。小売店舗のレジで、期間限定の掛け捨て型の保険に加入する、あるいは投資信託を購入するということも十分に考えられる。あるいは、ビッグデータを活用して、小売店舗のレジがその人の信用力の審査を行う場になる可能性もある。ネットワーク技術がもたらす社会的な変革のマグニチュードは、非常に大きい。銀行などに関するこれまでの常識は、覆される可能性が高まっている。

 イオンがキャッシュアウトのサービスを開始することを受けて、他の小売り関連企業も同様の、あるいはさらに先進的なサービスを提供して、顧客を取り込もうとするだろう。そうした動きが続くと、徐々に社会における既存の銀行業界の存在感が小さくなる可能性もある。

 イオンの取り組みは、小売業界の再編にもつながる可能性がある。米国の玩具量販店大手トイザらスの経営破たんにみられるように、小売業界はアマゾンなどのハイテク企業との競争にさらされている。店舗よりもオンライン上でのショッピングを選ぶ個人も増えている。競争に勝ち残るためには、顧客の取り込みが欠かせない。いかに多くの顧客を自社のネットワークに取り込むかが、競争を左右するだろう。

 そのためには、他の企業を買収する、フランチャイズを強化し、自社のネットワークにより多くの企業、顧客を取り込むことが不可欠だ。今後の展開によっては、小売業者が製造業を買収する、物流業を自社の傘下に収めるなど、かなりダイナミックな展開が考えられる。
(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)

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