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NEC完全凋落、談合発覚で入札指名停止…赤字回避のため成長事業売却の「自転車操業」

文=編集部
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NECは虎の子の車載用リチウム事業から撤退

 ソニーとは対照的に、日本電気(NEC)は沈む。

 18年3月期の連結決算(国際会計基準)は、売上高にあたる売上収益は前期比5.1%増の2兆8000億円、営業利益は19.5%増の500億円、純利益は28.2%増の350億円の見込み。純利益の従来予想は300億円だった。だが内実は、保有株式の売却で増益にする“ヤリクリ決算”だ。

 NECは不正の処理に追われた。計4件、談合による独占禁止法違反を認定された。うち3件で課徴金納付命令を受け、自治体からは指名停止を受けて入札に参加できない事態に陥った。

 東京電力関連の1件は自主申告で処分免除となったが、消防デジタル無線機器の談合、中部電力関連(電力保安用通信機器など)の2件の談合では、計12億4065万円の課徴金を課せられた。

 指名停止を受けたため、売上収益で400億円、営業利益で100億円の影響が出た。それを穴埋めするため、事業の買収・売却を進めた。

 東証1部上場の電子部品メーカー、日本航空電子工業を192億円でTOB(株式公開買い付け)を実施し、1月に連結子会社にした。日本航空電子の18年3月期の売上高は前期比11.9%増の2345億円、営業利益は45.0%増の174億円、純利益は66.3%増の112億円の見込み。この分が上乗せされ、NECの業績の落ち込みを下支えした。

 保有していた半導体大手ルネサスエレクトロニクスの株式売却により43億円の営業外利益を17年4~9月期に計上した。また、電子部品を製造するNECトーキンの全株式を米国企業に売却。148億円の営業外利益を捻出した。

 車載用リチウムイオン電池事業から撤退する。日産自動車と共同出資で設立したオートモーティブエナジーサプライ(AESC)を中国の投資ファンドGSRキャピタルに売却する。AESCは日産が51%、NECが49%を出資。リチウム電池市場ではパナソニックに次いで2番手。日産のEV車リーフ向けが主力で16年3月期の売り上げは366億円をあげていた。

 日産はカルロス・ゴーン会長の「部品は競争原理が働く外部から調達する」方針に基づきAESCの売却を決めた。経営権を持つ日産の決定にNECは従うしかなかった。

 これに伴い、AESCに心臓部の電極を供給する生産子会社NECエナジーデバイスもGSRに売却する。どちらも18年3月30日に売却。売却益はAESCが100億円、NECエナジーは60億円を見込んでいる。NECはこの利益を織り込んでいないため、利益は上振れするとみられる。

 だが、GSRに売却する電極は「手塩にかけて育てた虎の子の技術」(NECの元役員)。NECは、EV(電気自動車)時代の本格的な到来を前に、成長が期待できる車載用リチウム電池を失うことになり、大きな損失だ。

 株価は経営を映す鏡だ。2000年には高値3450円をつけたが、最近は200~300円台。17年10月に10株を1株に株式併合したため、見せかけは3000円前後の株価になっているが、実態は300円。安値は11月24日の2866円。つまり286円だ。

「電々ファミリー」の長兄といわれた頃の面影は、まったくない。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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