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鈴木祐司「メディアの今、そして次世代」

テレビ出荷台数、業界予想の半分に…4Kは当初予想の3割、全視聴履歴取得で革命

文=鈴木祐司/次世代メディア研究所代表

 15年予想では750万台弱に下方修正されたが、実績と予想には依然として350万台の開きがある。そして2度下方修正された16年予測でも625万台とされているので、約225万台の差が残った。

 予測の前提は、11年のアナログ停波の際にデジタルテレビの駆け込み需要が起こり、これが将来の先食いとなったために12~15年は一時的に低迷するが、16年以降に再び高まり、20年頃にはアナログ時代と同様に年間1000万台の出荷に戻るとされていた。

 しかし、現実はまったく異なる。時代はすでにスマホやタブレットの「スマデバ全盛」となっている。各家庭の子供部屋や寝室などにあった2台目以降のテレビは、もはやテレビに買い換えられなくなっている。スマデバにとって代わられているからだ。ところが従来の予測は、テレビに買い換えられるはずとしている。このように状況を読み間違えている。

 もっと厳しい見方をしてみよう。世帯数を5000万、テレビの平均的耐用年数を10年とすると、年間500万台のテレビが出荷される計算になる。ところが、前述のとおり17年1年間のテレビ出荷は400万台に届かない。つまり“1台目のテレビ”ですら買い換えが進んでいない可能性が疑われる。内閣府「消費動向調査」によれば、世帯主が29歳以下の家庭では、テレビの普及率はすでに85%まで落ちている。4K・8Kはいうに及ばず、テレビ自体が安閑としていられない状況なのである。

全数ログの可能性

 以上は、テレビが高画質化で進化できるという発想の危うさを示す。ただし「テレビ×ネット」の発想で、テレビが今まで以上の価値を生み出す萌芽も見え始めている。メーカーによっては、17年にネット対応テレビを購入した人々のネット接続率は7割に達する。00年にBSデジタル放送が始まって以来、デジタルテレビのネット接続率は2割ほどに低迷していたが、この結果、ようやく3割に届こうとしている。こうした状況を前提に、今ネット接続テレビで新たな取り組みが進んでいる。

 たとえば東芝は、この1年でネット接続テレビを所有する家庭のログ(視聴履歴)取得許諾率が8割に達した。ログの収集は、一部の偏った人々が対象というイメージがある。ところが今や、値段の高い高級大型テレビだけでなく、4万円ほどの低価格モデルから10万円弱のモデルなども増えており、幅広い層を対象とする調査になり始めている。

鈴木祐司/メディアアナリスト、次世代メディア研究所代表

鈴木祐司/メディアアナリスト、次世代メディア研究所代表

東京大学文学部卒業後にNHK入局。ドキュメンタリー番組などの制作の後、放送文化研究所、解説委員室、編成、Nスペ事務局を経て2014年より現職。メディアの送り手・コンテンツ・受け手がどう変化していくのかを取材・分析。特に既存メディアと新興メディアがどう連携していくのかに関心を持つ。代表作にテレビ60周年特集「1000人が考えるテレビ ミライ」、放送記念日特集「テレビ 60年目の問いかけ」など。オンラインフォーラムやヤフー個人でも発信中。
次世代メディア研究所のHP

Twitter:@ysgenko

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