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延々と内部抗争を続ける出光を、投資家が見限り始めた

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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 しかし、出光の創業家はこの経営方針に反対した。海外資本との関係がある昭和シェルとの経営統合は出光の組織の風土に合わない、消費者本位の経営理念に反するなどがその理由だ。

 企業の成長、社会の変化などを考えると、創業家の主張が幅広い支持を得られるとは考えづらい。実際、多くの株主も昭和シェルとの統合を重視する現経営陣の戦略に賛同している。結局のところ、創業家にとって重要なことは企業に対する影響力を温存し、経済的な利得を得ていくことと考えられる。

株式投資家の信頼を失いつつある経営陣

 問題は、出光の経営陣が創業家を納得させることができていないことだ。これまでの展開を見る限り、経営陣が創業家と協議を重ねて事業の持続性と成長分野を開拓することの重要性への理解を取り付けてきたとはいえない。むしろ、経営陣と創業家の関係は悪化しているように見える。

 創業家の納得を得ることができなかった結果、出光経営陣は創業家の持ち株比率を低下させることを優先せざるを得なくなった。今年7月、出光は公募増資で約1200億円を調達し、創業家の持ち株比率は26%程度に低下した。

 増資と同時に、経営陣は株主だけでなく、株式市場参加者からの信頼を失ったともいえる。なぜなら、公募増資には他の株主の価値を希薄化させるリスクがあるからだ。そのメカニズムは、次のようなシンプルな例で理解できるだろう。企業の業績や配当性向などが一定と仮定する。その状況下で発行済みの株式数が増加すると、既存の株主が受け取る価値(一株当たりの配当金額など)が減少する。これを価値の希薄化と呼ぶ。

 なお、東京地裁は公募増資に関して、支配権争いをめぐるものであり合理性を見いだせないとの見解を出した。加えて経営陣が主張する海外投資などのために増資が必要ともいえないとの見解も示された。それでも増資が認められたのは、多数決の原理にのっとった場合、多くの株主が経営陣の考えに賛同していたからだろう。

 結果的に、公募増資で創業家の影響力を低下させた経営陣の手法は、強引な印象を残した。海外投資家の中には、「出光での主導権争いは見ていて呆れる」「ガバナンスが機能していない」と冷ややかな反応を示すものもいる。

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