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鈴木祐司「メディアの今、そして次世代」

連ドラ、全話ネット無料放送が一般化か…フジ『明日の約束』視聴率爆増の「隠れた仕掛け」

文=鈴木祐司/次世代メディア研究所代表

 しかも一気見は、同ドラマの難解さを緩和する役割も果たした。もともと同ドラマは1シーンが一般のドラマよりかなり短く、テンポよく場面が転換するようになっていた。ところが細かいステップを踏むような展開は、いわばピースが極めて多く解くのが大変なジグソーパズルのようなもの。見ている側は“ちょっと気を許す”と重要な布石を見落としたり、話の流れが見えなくなったりしてしまう。ところが全話と全チェインストーリーを一気見することで、絡まっていた糸が解れるように、すっと緻密な構成と個々の登場人物の関係が見えてくるようになっている。

 視聴率が4.3%から6.0%に上昇した原因のすべてとまではいえないものの、ここでドラマにハマった視聴者は少なからずいたはずだ。

進むテレビ×ネット

 ドラマとネットの連携は、2008年に始まったフジテレビオンデマンドNHKオンデマンドが最初の取り組みだった。ただし当時は、直近の放送がそのまま有料で配信されただけである。

 次にNHKは10年から11年にかけて、大河ドラマや連続テレビ小説(朝ドラ)などで『5分でわかる~』というタイトルで、5分の無料ミニ動画を配信し始めた。番組宣伝が主な目的で、11年4月から放送した韓流ドラマ『イ・サン』では、当初6%ほどだった視聴率が11月には9%を超えるほどの効果を上げた。民放各局もすぐにダイジェスト・ミニ動画の導入を始め、なかには初回から直近の回までをすべて配信し、視聴率向上に努めた局もあった。

 そして14年1月、日本テレビは『明日、ママがいない』などで見逃し配信を始めた。放送後から1週間、放送を見逃した人に向け、有料ではなく無料で見られるようにした。この取り組みは半年後には広告付きの配信に進化した。放送への視聴回帰を促すだけでなく、広告収入増も狙った取り組みであった。

 その後に各局は、放送したドラマのスピンオフや独自ミニ動画などにも乗り出す。例えば日本テレビは、子会社化したHuluの契約増と放送回帰を狙い、16年秋放送の連続ドラマに連動させた『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子…がいない水曜日』や、17年冬放送『東京タラレバ娘』に連動した『東京ダラダラ娘』などの配信を始めた。NHKも大河ドラマ『真田丸』のスピンオフ『ダメ田十勇士』で話題を集めていた。

 そして『明日の約束』での、チェインストーリーとドラマ終盤前での全話一気配信だ。紆余曲折はあったものの、“テレビ×ネット”でドラマは確実に連携効果を出し始めている。この先、どんな新しい知恵が出てくるか。楽しみにしたいものだ。
(文=鈴木祐司/次世代メディア研究所代表)

鈴木祐司/メディアアナリスト、次世代メディア研究所代表

鈴木祐司/メディアアナリスト、次世代メディア研究所代表

東京大学文学部卒業後にNHK入局。ドキュメンタリー番組などの制作の後、放送文化研究所、解説委員室、編成、Nスペ事務局を経て2014年より現職。メディアの送り手・コンテンツ・受け手がどう変化していくのかを取材・分析。特に既存メディアと新興メディアがどう連携していくのかに関心を持つ。代表作にテレビ60周年特集「1000人が考えるテレビ ミライ」、放送記念日特集「テレビ 60年目の問いかけ」など。オンラインフォーラムやヤフー個人でも発信中。
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Twitter:@ysgenko

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