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『anone』シュールな笑い狙いだだスベリ…失敗作で旬の女優・広瀬すずを無駄遣い

文=吉川織部/ドラマウォッチャー
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 広瀬すず主演の連続テレビドラマ『anone』(日本テレビ系)の第3話が24日に放送され、平均視聴率は前回から0.6ポイント減の6.6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だったことがわかった。脚本を手掛ける坂元裕二氏が描く独特の世界観をおもしろいと感じた人だけがついていっている格好だ。次回で視聴率が反転するような要素も見当たらないことから、さらなる苦戦が予想される。

 ハリカ(広瀬)に空き巣を目撃され、とっさに誘拐してしまった舵(阿部サダヲ)とるい子(小林聡美)。ハリカを連れたまま舵のカレー店に戻るが、そこには発砲事件を起こして逃走中の西海(川瀬陽太)が隠れていた。西海はハリカを人質に身代金を要求しようと思い付き、るい子を交渉役に仕立てる。

 るい子からハリカの写真を見せられた亜乃音(田中裕子)は、それが娘ではないことに気付くが、要求に応じて夫の死亡保険金1000万円を支払うと答える。るい子は偽札のことをほのめかしてさらに大金を要求するが、亜乃音は偽札を実際に印刷して見せ、出来が悪くて使い物にならないことをわからせる。現金受け渡し場所に現れた西海はまんまと1000万円を手にするが、ほどなくしてそれが偽札であることに気付き、自暴自棄になって拳銃の引き金を自分に向けて引いた。その頃、本物の1000万円を持ったるい子はバスに乗って現場を後にしていた――という展開だった。

 あらすじだけ見れば、次から次へと予想外のことが起こっておもしろそうだが、実際にはテンポが悪いせいでやたらと長く感じたし、視聴後には「これだけ時間を使って、なんだったの?」という疑問が湧いてきた。舵の旧知の友人である西海が突然発砲事件の犯人となり、話を引っかき回したあげくに死んでしまうというオチで何を描きたかったのか、非常にわかりにくい。身勝手な理屈をこね回す倫理観の欠けた人物である半面、迷い込んだフェレットを持ち主に返すなど動物には優しいという描写もあったが、シュールな笑いを誘おうとしてスベっている感じが否めず、ちぐはぐな場面となってしまった。

 また、決して善人ではないものの、これまではまあまあ共感できる人物として描かれていたるい子が、第3話では小ずるい悪人に豹変してしまったのも少々ついていけなかった。亜乃音への要求金額を勝手に増やして西海の上前をはねようとしたり、夫の死亡保険金であるなけなしのお金をだまし取ったりと、やっていることがひどい。あげくの果てに、ずっと一緒に行動してきた舵を裏切って、ひとりで1000万円を持ち逃げしてしまう。小林の演技がほぼずっと無表情で話し方にも感情がなく、ムスッとしているように見えるのもかなり印象に影響していると思うが、ムカつくキャラクターに変貌してしまった。

 このほか、主演の広瀬が口に粘着テープを貼られたまままでほとんど話さないという演出も少々鼻についた。ベリーショートで役に臨んだ広瀬による、これまでのイメージを一新させるようなぼそぼそと話す演技は新鮮だったが、さすがに台詞を言わせないのはやりすぎだと思う。なんだか、「広瀬すずの無駄遣いができるオレたち、すごくない?」と制作陣に言われているような気がしてしまった。

 今回、広瀬演じるハリカはストーリーにほとんど関わっていないので横に置くが、西海とるい子を通して悪人が良い行いをしたり、それほど悪い人ではないと思われた人物が悪事に手を染めたりする様子を描いたことから考えると、このドラマ自体がそもそも「どんな人にも善悪両面があり、善の心と悪の心を抱えて生きていく」ことを描こうとしているのではないかとの推測も成り立つ。

 第1話ではハリカの幼い頃の幸せな思い出が偽りの記憶であり、本当は更生施設の施設長(倍賞美津子)に虐待されていたことが明らかになったが、実はそれすらも一面の真実であり、施設長もただの悪い人ではなかったというどんでん返しの展開が今後あるとすれば、ハリカにとっても視聴者にとっても救いになるし、ドラマのテーマとしてもきれいにまとまるのではないだろうか。むしろ、そのくらいの大仕掛けがないと、視聴率はおろか話題にも上らずに忘れられていくドラマになってしまいそうだ。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)

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