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『西郷どん』陳腐な演出で渡辺謙が「バカ殿」化…俳優陣の熱演は見応えアリ

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『西郷どん』公式サイトより

 鈴木亮平が主演を務めるNHK大河ドラマ『西郷どん』の第4回が28日に放送され、平均視聴率は14.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だったことがわかった。

 薩摩藩主・島津斉興(鹿賀丈史)は、嫡男の斉彬(渡辺謙)を藩主に担ごうとする家臣たちの粛清を進め、吉之助(鈴木)らが師と慕う赤山(沢村一樹)にも切腹の沙汰が下った。切腹に立ち会った吉之助は怒りと悲しみを募らせ、江戸の斉彬に決起を促す手紙を書き送る。

 一方、幕府も斉興に隠居を勧めるが、斉興は一向に応じようとしなかった。意を決した斉彬は斉興を訪ね、幕府の意向を説いて退陣を迫るも、斉興はかたくなな態度を崩そうとはしなかった――という展開だった。

 今回良くも悪くも話題を集めたのは、この後の展開だ。隠居もしないしお前には家督を譲らないと言い張る父の前で、懐から拳銃を取り出した斉彬。リボルバーに弾丸を1発だけ装填し、銃口を自らのこめこみに当てて引き金を引く「ロシアンルーレット」を提案したのだ。

 最初に引き金を引いた斉彬は不発。続いて斉興の番となったが、恐怖におののいた斉興は引き金を引くことができず、棄権。その瞬間に斉興の隠居と斉彬の藩主就任が決まった。

 鹿賀と渡辺というベテラン俳優2人による息詰まる対決は見応えたっぷりだったし、好意的にとらえた視聴者も少なくなかったようだ。だが、ドラマの構成として適切だったかというと、かなり疑問符が付く。好意的な反応以上に批判の声も多かったようだ。

 まず、ロシアンルーレットを提案した斉彬が「これは父上と私の最後の戦です」と宣言したのが引っかかる。そもそもこれまでの回で、斉興と斉彬が「戦」をしていたというイメージがあまりないからだ。

「最後の戦」と言うからには、今まで何度も戦ってきたはず。だが、劇中で描かれたのは「お由羅騒動」の1回のみ。それすらも淡々と描かれたため、当人同士の直接対決に至る伏線として弱すぎる。

 また、薩摩の現状を憂い、自らが藩主になろうとする斉彬が運任せの勝負に出る意味もわからない。

 もし本当にどちらかが死んでしまったら、どうするつもりだったのか。江戸藩邸での発砲事件で藩主もしくは嫡男が死んだとなれば、それこそ大事件である。本作では視野が広く開明的な名君として斉彬を描くようだが、そんな人物が後先も考えないようなロシアンルーレットに挑むのだろうか。人物設定として矛盾していると言わざるを得ない。渡辺の演技がうまいため、なんとなく良く見えてしまうが、よくよく考えたら「バカ殿」と言われても仕方がない。

 必然性もなくロシアンルーレットを話に持ち込んだため、斉興が命惜しさに藩主の座を譲ったように見えるのも残念だ。

 悪役を単なる小物として描くのではなく、どんな人にもその人なりの信念や正義があることを描くのでなければ、話に深みが出てこない。だが、本作では斉興をひたすら私欲にまみれた圧制者として描くばかりで「小物感」丸出しだったため、斉彬の勝利にもそれほどカタルシスが生まれない。

 では、どうすれば良かったのか。

 実は、ロシアンルーレットの場面は全カットしても成り立つ。斉興の隠居については、幕府から隠居を進められるシーンとナレーションだけで十分説明できるからだ。

 どうしても鹿賀と渡辺の直接対決を盛り込みたかったのなら、順序を逆にすることもできた。

 斉彬が幕府の意向をちらつかせながら退陣を迫るも、斉興は頑として拒否。その後、斉興は官位を授けると言われて江戸城に呼び出され、官位と引き換えに隠居を勧告される――という流れではどうだろうか。少なくとも、ロシアンルーレットで対決するよりは、渡辺が理詰めで鹿賀を追い詰める会話劇のほうがよほどおもしろかったはずだ。

 史実の空白をフィクションで埋めておもしろくなるのならどんどんやるべきだが、史実で明確な部分をわざわざ創作して、しかもそれがつまらないというのは最悪だ。現状では、鈴木や渡辺ら俳優陣による熱量が感じられる演技に、ドラマ全体が助けられている部分が大きい。後に篤姫となる於一役で北川景子が登場する次週以降の展開に期待したい。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)

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