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成馬零一「ドラマ探訪記」

なぜ『きみが心に棲みついた』から目が離せないのか…その「言いにくい」理由

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火曜ドラマ『きみが心に棲みついた』|TBSテレビ」より
 下世話な好奇心と軽い罪悪感がチクチクと刺激されて目が離せない。それが、TBS系火曜夜10時から放送している連続ドラマ『きみが心に棲みついた』の第1話を見終わったときの印象だ。


 天堂きりんの同名少女漫画を原作とする本作は、下着メーカーで働く女性・小川今日子(吉岡里帆)が、自分を変えるために漫画編集者の吉崎幸次郎(桐谷健太)と付き合おうと積極的にアプローチする一方で、大学時代の彼氏・星名漣(向井理)と再会し、2人の間で気持ちが揺れるという三角関係を描いたものだ。

 設定はよくある恋愛ドラマなのだが、各キャラクターの味付けが濃くて見ていてゾワゾワする。特にヤバいのが、小川の元カレの星名。2人は大学時代に付き合っていたのだが、回想シーンで描かれる2人の関係は恋人というよりは「教祖と信者」という感じの共依存カップルで、小川が星名の気持ちをつなぎとめるために男友達の前でヌードを見せるという痛々しい場面もある。

 星名は少女漫画『花より男子』(集英社)のあたりからはやっている俺様系ドSキャラだ。少女漫画の愛情表現に「壁ドン」というものがあるが、あれは冷静に考えれば恫喝で、客観的に見るとデートDVや(男から女に向かって行う)パワーハラスメントである。

 壁ドンのような、男が強引に女を手に入れようとする愛情表現を、少女漫画やイケメンドラマは魅力的なものとして描いてきたのだが、「少女漫画的なロマンチックフィルターが外れると、こんなにエグくてつらい話になるのか」と驚かされる。

『あなそれ』路線を踏襲した『きみ棲み』


 脚本には昨年同枠で放送された不倫ドラマ『あなたのことはそれほど』(以下、『あなそれ』)を手がけた吉澤智子が参加しているが、あのドラマも、少女漫画的な結婚をしても初恋の思い出を手放せない女が初恋の男と不倫をしてドロドロの愛憎劇となってしまうものだった。

 TBSの火曜ドラマは『逃げるは恥だが役に立つ』のような現在の労働観やジェンダー観を反映した社会性のあるラブコメを輩出したことで有名な枠だが、一方で『あなそれ』のような下世話なドロドロとした作品も生み出している。

 いうまでもなく本作は『あなそれ』路線のドラマで、おそらくストーリーは、自分に自信がない小川が新しい男と付き合うことで星名のマインドコントロールから解放されて、精神的に自立する成長物語へと向かうのだろう。

 しかし、見ていて不穏なのは、小川の内面がとても不安定で自信がないことと、彼女を救う立場になるであろう桐谷が演じる漫画編集者・吉崎の冷淡さだ。そのため、「仮にこいつと付き合っても、また同じような共依存になるだけなんじゃないか」と想像してしまう。

世間とズレたイタい女がハマる吉岡里帆


 それにしても、こういうまわりとズレた不安定な女を演じさせると、吉岡は見事にハマる。吉岡の芝居は、ほかの役者と比べて妙に浮き上がって見える。だからこそ、視聴者に対してグイグイと詰めてくる“距離感の近さ”があり、「女優として成功したい」という自己顕示欲が、ほかの女優と比べてもダダ漏れになっているように感じる。

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