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アマゾン、銀行設立か…利用者の利便性大幅向上、従来の銀行ビジネスを覆す

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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 それ以上に重要なことは、世界全体で進むビジネスのプラットフォームの開発競争に、金融機関がどう関わっていくかだ。プラットフォーム開発のイメージを持つためには、アマゾンのビジネスを考えるとよい。アマゾンは世界のクラウドコンピューティング市場の30%超のシェアを手中に収めている。生鮮食品から耐久消費財まで、広範な“モノ”を扱うEC(電子商取引)プラットフォームも提供している。事実上、アマゾンがあれば生活できる環境が整いつつある。

 現時点でいえば、データ関連のサービスはアマゾンの収益の柱だ。しかし、同社の経営を見ていると、特定の事業で収益を稼ぐ発想は見当たらない。これは、上述の金融機関経営者の発想とは異なる。アマゾンだけでなく、アリババなどのハイテク企業も、金融サービスを成長実現のためのひとつのピースと考えているはずだ。

 もし、アマゾンが銀行ビジネスに参入すれば、同社の“プラットフォーム”は従来以上のペースで、企業や消費者を取り込む可能性がある。すでに、米国の通貨監督庁の関係者からは、商業を営む企業が銀行業に参入することによって、消費者の利便性が高まるとの認識を示している。“アマゾン銀行”が実現する可能性は高まっている。

国内の金融機関が促進すべき、グループ外企業との協働

 
 重要なことは、IT技術の高度化とその実用化に支えられて人々の生活とネット空間の関係が深まるにつれて、社会が変化するということだ。今後、銀行を中心とする既存の金融業界からそれ以外の業界に、金融サービスの担い手がシフトしていく可能性がある。

 大規模かつ急速な社会の変化に、個々の企業が独自の取り組みで対応することは難しい。電気自動車の開発を見ても、多くの企業が他のメーカー、異業種の企業の参加を呼びかけ、オープンなかたちで新しい製品のコンセプトを具体化したり、技術を開発しようとしている。そうした取り組みの背景には、多くの企業、消費者からアクセスされるプラットフォームを整備し、自社のビジネス範囲を拡大させていこうとする考えがある。

 一方、国内金融機関の経営を見ていると、依然としてグループの経営はグループのリソースを軸に進めるべきという考えが強いようだ。一部の経営層には、他行との連携はタブーだとの頑なな考えを持つ者もいるようだ。EC企業など異業種との協働を進める銀行も出ているが、小粒な感は否めない。そうした発想は、かつての電機業界と似た部分がある。シャープ、三洋電機など、わが国の電機メーカーは国内で完成品を生産し、輸出する、慣れ親しんだビジネスモデルに固執し過ぎた。その教訓を、金融業界も生かすべきだ。

 これまでの発想を重視することが、新しい取り組みにつながるとは限らない。往々にして、従来の発想が柔軟な発想を阻害することのほうが多い。国内大手金融機関が協力して仮想通貨の開発と実用化を目指すことは、わが国の発想やフィンテックビジネスに関する規制などが、国際的な競争環境に適応できるか否かを見極めるためにも必要だ。

 ハイテク技術の普及はプラットフォームの開発競争などを通して、すべての業界・企業の将来を大きく左右するだろう。変化のスピードは、加速する可能性が高い。ライバル企業、異業種などとの連携を強化して、新しい金融のビジネスモデルを開拓することが、わが国の金融機関の生き残りには不可欠だ。
(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)

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