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「相馬勝の国際情勢インテリジェンス」

北朝鮮、突然にソフト路線に転換…米国の軍事的脅威に屈服、南北首脳会談を提案

文=相馬勝/ジャーナリスト
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北朝鮮、突然にソフト路線に転換…米国の軍事的脅威に屈服、南北首脳会談を提案の画像1韓国の文在寅大統領(右)と北朝鮮の金与正氏(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

 北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の妹、金与正党中央委員会第1副部長ら北朝鮮高官代表団が先週、韓国の文在寅大統領と会談し、金正恩氏の親書を手渡すとともに、金氏の提案として、早期の北朝鮮訪問を招請し南北首脳会談を呼びかけた。このサプライズ提案は代表団団長の金永南最高人民会議常任委員長が米軍による対北朝鮮攻撃の回避策として、金正恩氏を説得した結果、文氏に伝えられたことがわかった。

 金永南氏は正恩氏が崇拝している祖父、金日成主席の側近として長年仕えており、北朝鮮創始者としての祖父をモデルとした「帝王学」の教育係として金正恩氏に強い影響力を持っており、今回の韓国訪問団に金与正氏を加えるよう進言したという。

 金永南氏は1928年2月4日、日本統治時代の平壌で生まれており、ちょうど90歳を迎えたばかりだ。名門の金日成総合大学を卒業、モスクワ大学にも留学するなど、党のエリート幹部として嘱望され、その後、地道で真面目な勤務態度で党政治局員に抜擢。党国際部長として、北朝鮮の外交政策の責任者も務めたほか、金日成氏の演説草稿のほとんどを作成するほど同氏の信頼が厚かった。

 金日成氏死去後、金正日指導部時代の1998年、名目上の国家元首に当たる最高人民会議常任委員長に就任。2011年の金正恩指導部発足後も国家元首として、名目上の党序列第2位を維持している。北朝鮮情勢に詳しい在京の外交筋は、こう分析する。

「50年以上も政権中枢で要職を歴任しながらも、文官として、権力を握ろうという野心をもたず、金王朝を支え続けきた。この恬淡として好々爺然とした姿勢が、3代目で疑り深い金正恩氏の信頼を勝ち得た」

 金正恩氏は髪型や体型、あるいは帽子や背広などの服装も祖父の金日成氏に似せているとされるが、このほか、物腰や所作、喋り方なども金日成氏をよく知る金永南氏からの指南を受けているというほどだ。

 金正恩氏は外交や内政についても、金永南氏から助言を受けている。特に金永南氏は外交政策に熟達しており、2000年の金大中韓国大統領と金正日総書記、さらに07年の盧武鉉韓国大統領と金正日氏の2回の南北首脳会談にも裏方として直接関係していた。今回の提案も金永南氏が主導したという。

「金永南氏は、これ以上トランプ政権を挑発すれば、米軍の対北軍事攻撃計画が現実化することを恐れ、金正恩氏にソフト路線への変換を提案。07年に、盧韓国大統領と金正日氏が南北首脳会談を行った際、盧大統領の最側近で秘書室長だった文在寅氏と接点があった金永南氏が韓国側とのパイプを利用して、金与正氏を加えた韓国訪問団を組織。金正恩氏による南北首脳会談の呼びかけにつながった」(同)

(文=相馬勝/ジャーナリスト)

相馬勝/ジャーナリスト

相馬勝/ジャーナリスト

1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。著書は「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)、「習近平の『反日計画』―中国『機密文書』に記された危険な野望」(小学館刊)など多数。

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