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東芝、「銀行家」新会長就任で露呈した「深刻な状況」

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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 車谷氏は三井住友銀行の副頭取を務め、直近では英国のプライベート・エクイティ(PE)・ファンドであるCVCキャピタル・パートナーズの日本法人会長を務めた経歴を持つ。内外の金融実務に精通した人材を登用することで、東芝内部にはない視点を社内に持ち込み、経営のアカウンタビリティ(説明責任)を果たしていくことが重視された人選だ。その上で、車谷氏が東芝の経営に新しい発想を持ち込むことができるかが問われる。

深刻な東芝の人材不足

 ガバナンスの再構築を社外の人間にゆだねることは、東芝のような企業の再建には重要なことだ。同時に、社内に経営の再建を主導できるだけの資質を持つ人材がいないことも、今回の人事発表によって明らかになったといえる。状況はかなり深刻と考えられる。

 車谷氏は金融のプロではあるが、企業の経営に関する手腕は未知数だ。新CEOの下で東芝の経営がどうなるかは、やってみなければわからない。現時点で想定される影響を示すと、車谷氏を筆頭に東芝が主力行である三井住友銀行との関係を強化するなどし、財務内容を改善することが期待される。

 問題は、世界的なハイテク技術の開発競争が進むなかで、将来の主力事業をどう育てていくかだ。現在の経営陣はインフラビジネスを収益の柱にしていく考えを持っているが、東芝社内のリストラが進むなかで新興国の原子力需要などをどう取り込めるかは、かなり見通しづらい。それよりも、人工知能やビッグデータの解析などで、他社にはないテクノロジーを開発し、需要を生み出すことも重視されるべきだ。

 そのための改革を進めることは、口で言うほど容易なことではない。金融のプロとして、投資の観点からそうした技術の発展・普及の可能性を論じることと、経営者としてどのような技術を研究・開発すべきかを考えることはかなり異なる。

 このように考えると、車谷氏の役割は、経営体制を立て直し、既存の事業ポートフォリオを中心に東芝のキャッシュフローを安定させることにある。それは、次の経営者までの“つなぎ”ではなく、今後の経営を左右する重責だ。新CEOの下で、東芝がインフラ関連市場での競争力を上げ、成長に向けた買収などを行う体力をつけられるかが焦点だ。

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