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渡邉哲也「よくわかる経済のしくみ」

中国経済、日本のバブル崩壊直前と酷似で危険水域か…保険大手が政府管理下に

文=渡邉哲也/経済評論家

 そして、理財商品の販売で大量の資金を集めた銀行や保険会社は、運用の一環として海外の資産などを買いあさった。背景には、国内の不動産価格が異常に高騰してしまったため、国外の高利回り物件を買わざるを得ないという事情もあった。しかし、高値づかみした物件が不良債権化するなど、そのマイナス面が表出しているのが実情だ。

 これは安邦をはじめとする保険会社や銀行だけの問題ではなく、“財テク”に精を出してきた大企業にもいえることだ。現在、それらの企業は必死に資産売却やデレバレッジを行っているが、損失が生まれることは必至であり、継続自体が危ぶまれている企業も少なくない。

日本のバブル崩壊と同じ道をたどる中国

 昨夏、中国政府は海外への資本流出を防ぐために企業の海外投資に対する融資を規制する方針を打ち出した。この煽りを食うかたちになったのが、不動産大手の大連万達集団(ワンダ・グループ)だろう。

 ワンダ・グループは、16年にアメリカの映画会社のレジェンダリー・エンターテインメントや、ヨーロッパ最大手でイギリスの映画館チェーンのオデオン・アンド・UCIシネマズを買収するなどして、世界最大の映画館運営会社となった。

 しかし、規制強化後は資金調達に苦しみ、債務の返済資金を確保するために資産売却が相次いでいる。昨年6月にはホテルやテーマパークを合計631億8000万元(約9883億円)で売却、今年1月にもイギリス・ロンドンの不動産プロジェクトの権益60%を3560万ポンド(約54億4680万円)で売却している。

 この流れは、バブル前後の日本経済と非常に似通ってはいないだろうか。かつてバブル景気を謳歌していた日本企業は、海外の企業や不動産を積極的に買収した。三菱地所がロックフェラーセンターを、当時の松下電器産業(現・パナソニック)がMCAレコードを、ソニーがコロンビア映画を手中に収めたが、結果的には投げ売りせざるを得なくなるなど、ことごとく投資に失敗している。

 今の中国経済の状況は、さながらバブル末期の日本を見ているようだ。かねてささやかれていた中国のバブル崩壊が、いよいよ表面化してきたといえる。そして、このままいけばバブル崩壊後の日本で見た光景が中国で繰り返されることになるだろう。
(文=渡邉哲也/経済評論家)

渡邉哲也/経済評論家

渡邉哲也/経済評論家

作家・経済評論家。1969年生まれ。
日本大学法学部経営法学科卒業。貿易会社に勤務し独立。複数の企業を経営、内外の政治経済のリサーチや分析に定評があり、政策立案の支援、雑誌の企画監修、テレビ出演等幅広く活動しベストセラー多数、専門は国際経済から金融、経済安全保障まで多岐にわたり、100作以上の著作を刊行している。

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『ポスト平成ですごいことになる日本経済2.0:2020年までに生じる世界のリスクと新たな秩序』 平成から次の時代へと動き始めた日本。日経平均もバブル崩壊後の高値を更新、デフレ脱却が本格化しつつある。米中ロの冷戦復活、そして東京オリンピック開催は、昭和の高度成長期とそっくりで、歴史が再び繰り返されようとしている。この先、日本と日本経済に何が起こるのか、そして「2018年の世界最大リスク」とされた中国の動向、混乱が続く朝鮮半島の行方、分断が進む欧米の帰結は。気鋭の経済評論家が完全分析! amazon_associate_logo.jpg

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