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視聴率4%台『anone』、広瀬すずいなければ2%台でも不思議ではないヒドイ脚本

文=吉川織部/ドラマウォッチャー
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 広瀬すず主演の連続テレビドラマ『anone』(日本テレビ系)の第9話が14日に放送され、平均視聴率は前回から1.0ポイント減の4.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だったことがわかった。さすがに「内容が暗いから数字が伸びないのは仕方がない」といって取り繕えるレベルではない。話題作を多く世に送り出した坂元裕二氏の脚本で当初は注目されたが、残念ながら今回は「視聴者にノーを突き付けられた」と表現したほうが適切だろう。

 連続ドラマの最終回1話前といえば、起承転結の「転」が描かれることが多い。このドラマもその例にならい、辻沢ハリカ(広瀬)や林田亜乃音(田中裕子)ら疑似家族の幸せな日々が崩壊し、バラバラになってしまう様を第9話で描いた。

 大まかに書くと、偽札づくりの首謀者である中世古理市(瑛太)がヘマをしたせいで、警察による捜査が始まる。ニュースで防犯カメラの映像を見た理市の妻(鈴木杏)は、映っているのが夫だと警察に通報。亜乃音たちはあわてて証拠を隠滅するが、訪ねてきた刑事は機械の下に1枚だけ落ちていた偽札の切れ端を見付け、亜乃音を警察署に任意同行させる――という展開だった。

 毎回ラスト近くで大事件が起こるように思わせておきながら、結局翌週になったら大して何も起きないというこのドラマの法則は今回も発動した。前回、偽札づくりの現場を目撃してしまった花房万平(火野正平)は首謀者の理市に首を絞められて終わったが、案の定、今回あっさり助かった。そして、彼らの「1円も使っていない」との言葉を信じ、自分が黙っていればなかったことになるなら……と偽札づくりを見逃す。

 亜乃音に好意を抱く万平が甘くなるのは、わかる。ただ、問題はその後だ。理市は嘘をついており、本当はロックされたATMに偽1万円札1枚を残してしまっていた。当然すぐに発覚し、警察による捜査が始まったのは前述の通り。ところが、「偽札を使っていない」との話が嘘だったことを知った万平の動向は一切描かれないのは不自然すぎる。

 信頼していた亜乃音にだまされたと感じた万平が激高したり、警察への出頭を勧めたりするような描写が何もなく、急に存在しない人物のようになってしまった。これまでの経緯から考えれば、ニュースを見て電話をかけたり、あわてて家に乗り込んだりするはずだ。脚本家が、キャラクターを動かしてみたはいいものの、急に持て余した感が半端ない。

 よくよく考えると、そもそも万平は話の展開にまったくかかわっておらず、いてもいなくても偽札づくりがバレたことに変わりはない。これでは、「必要性の薄いキャラクターで、必要性のないストーリーを紡いだドラマ」と評されても仕方ないのではないか。

 脚本が退屈な一方で、広瀬の演技は圧巻だ。ハリカは、紙野彦星(清水尋也)に一方的に思いを寄せる香澄茉歩(藤井武美)が父親に頼んで彦星の高額な医療費を用立てようとしているとの話を聞き、うれしさのあまり唇をかみしめて顔をゆがめ、涙を浮かべて何度も「よかった……よかった……」とつぶやく。どれほど彦星に「生きてほしい」と願っているかが胸に伝わる場面だった。

 また、自分がいるせいで彦星が茉歩の申し出を断ったと知り、彦星に別れを告げに行った場面の演技も秀逸。カーテンの向こう側で彦星に冷たい言葉をぶつけながら、首を左右にぶるぶると振り続けるシーンは涙を誘った。明らかに嗚咽し、涙で顔をぐしゃぐしゃにしながらも決して泣き声は立てず、言葉をつまらせることもなく、あくまでも冷たく彦星を突き放すハリカ。見ているこちらまでつらくて胸が苦しくなった。

 10代で、これほどの演技ができる女優はどれほどいるのだろうか。視聴率が低迷したことで、「視聴率が取れない女優」と酷評する人もいるが、逆にハリカ役が広瀬でなかったら、今ごろ2~3%台になっていたのではないかと思えてならない。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)

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