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韓国モノレール、予定から9年過ぎ完成時期未定…車両逆走や破断、相次ぐ計画変更で中止も

文=高月靖/ジャーナリスト
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 また、車両やレールだけでなく、橋脚など基本的な構造物にも手抜き工事が発覚。直線区間のレールがうねうねと蛇行している、橋脚の重心から外れた位置にレールが固定されているなど、素人目にも明らかな欠陥が次々に報告された。

 10年6月に新しく就任したソン・ヨンギル仁川広域市長は、8月にモノレール事業の全面再検討を指示。そして翌11年1月に仁川広域市は事業の白紙化を決め、すでに95%が完工していた施設を撤去する方針を固めた。

 第三者機関などの調査では、橋脚とレールの接合が不適切、設計に適用された安全基準そのものが不明瞭、工事に必要な免許を持たない下請け業者が施工していたなどの問題が発覚。外見は一応モノレールの体をなしているが、とても乗客を乗せて運行できる代物ではなかったことが明らかになった。

アトラクションの乗り物にするプランも頓挫

 
 だが迷走はまだ終わらない。11年10月に当時の与党・ハンナラ党仁川支部の働きかけで撤去が覆され、13年初頭の開通を目標に再検証がスタート。すると車両の設計から通信設備まですべての項目で不具合が見つかり、改めて運行不能が宣告された。

 そこで13年末に仁川交通公社が出してきたプランが、レールバイク。公共交通システムは諦める代わりに、遊園地のアトラクション的な乗り物として活用しようというわけだ。

 14年に入って仁川交通公社は、レールバイクに改修する事業者としてA社を選定。だが仁川広域市は同年10月、乗客の定員を当初計画の70名から8名に減らした小型モノレールに転用するよう指示を下す。すると仁川交通公社はなぜか、事業実績のないA社にそのまま小型モノレール事業を委託。一時は16年8月開通ともアナウンスされたが、当然これもうまくいくわけがない。やがて開通が17年5月に延期されたが、その3カ月前の時点でまだ1台の車両も完成していない有様だった。

10年越しのグダグダにやっと入った司法のメス

 
 こうして17年2月にA社との契約が解除され、事業はまたしても白紙化。この間に仁川広域市がモノレール事業に費やした予算は、実に1000億ウォン(100億円)に上る。

 仁川交通公社はまだ計画続行にこだわり、今度は19年開通を目指して17年9~10月に新しい事業者を公募。だが応札する企業数が規定に満たず、「流札」となる事態に陥った。同年12月にようやく車両を納入する「物品調達」のかたちで事業者を選定したが、実質的な工事発注の手続きとして不適切だと批判されている。

 いっぽう17年5月の政権交代を受ける格好で、ようやく仁川広域市の監査院がこの異常事態にメスを入れた。監査院は仁川交通公社による事業者選定のプロセスに問題があるとして、監査結果を検察庁へ送付。今年1月下旬、仁川地検特捜部が仁川交通公社事務所を家宅捜索する事態に発展している。

 ついに10年越しとなった欠陥モノレール騒動。あまりに異常な事態の真相が明らかになる日は来るのだろうか。
(文=高月靖/ジャーナリスト)

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