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西島基弘「食品の安全、その本当と嘘」

「天然物は安全」は本当?危険な食中毒が絶えず…毒魚で死亡例、ジャガイモで健康障害

文=西島基弘/実践女子大学名誉教授

 これらの毒魚は藻の有毒成分が食物連鎖によって毒を持つため、以前食べても問題なかった魚であっても、食べて発症することもあり厄介です。シガトキシンによる食中毒は、現在のところ日本では見当たりません。

 毒魚の種類が多い割には市販魚介類による食中毒が少ないのは、市場で業者が排除していることや、食品衛生監視員が市場に常駐して監視をしていることが要因と考えられます。フグやアオブダイ等の魚類の食中毒は、西日本に多い特徴があります。

 また、動物性自然毒の大半は家庭で起きています。その理由は、自分で釣って、自分で調理をして、自分で食べて中毒になるからです。ときには家族や仲間を巻き添えにしている例もあります。釣りをする人は、知らない魚を釣った時には、必ず漁業関係者に聞くなど気をつけることにより、魚介類による食中毒の大半はなくなるのではないでしょうか。

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植物性自然毒

 植物性自然毒としては、ジャガイモの発芽の部分は毒であるということは多くの人が知っています。しかし、そこだけではなく皮が緑色になった部分には芽の部分と同程度に毒性(主な毒性物質:ソラニンやチャコニン)が含まれています。このソラニンやチャコニンは調理時の温度では分解されません。ジャガイモによる中毒の大半は表2に示したように学校で多く発生しています。ジャガイモは比較的栽培しやすいため、教育の一環として栽培し、収穫したものを調理して食べる学校が多いようです。掘ったジャガイモを日の当たるところで乾燥・保存をしたために、ジャガイモの表面が緑色になり、それを食べたことによって食中毒が起きたことが推測できます。

 市販のジャガイモを食べたことによる中毒例は見当たりませんが、普通のジャガイモもソラニンを少し含んでいます。その量は外側に比較的多く、中心に近くなるほど少なくなっています。市販のジャガイモも購入後に保存するときには直射日光を避けることが必要です。

 キノコは真菌類で植物ではないとの意見もありますが、厚生労働省の食中毒統計では植物性食中毒に分類しています。キノコによる食中毒は、死亡者はほとんどいませんが、毎年少なからず発生しています。天然のキノコの判定はとても難しく、確実に知っているキノコ以外は食べないことです。

西島基弘/実践女子大学名誉教授

西島基弘/実践女子大学名誉教授

実践女子大学名誉教授。薬学博士。1963年東京薬科大学卒業後、東京都立衛生研究所(現:東京都健康・安全研究センター)に入所。38年間、「食の安全」の最前線で調査・研究を行う。同生活科学部長を経て、実践女子大学教授に。日本食品衛生学会会長、日本食品化学学会会長、厚生労働省薬事・食品衛生審議会添加物部会委員などの公職を歴任。食品添加物や残留農業など、食品における化学物質研究の第一人者として活躍している

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