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視聴率5%台の『anone』は、5話までで十分だった感否めず

文=吉川織部/ドラマウォッチャー
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 広瀬すず主演の連続テレビドラマ『anone』(日本テレビ系)の最終回が21日に放送され、平均視聴率は前回から1.2ポイント増の5.6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だったことがわかった。

 最終回は、第9話でバラバラになってしまった辻沢ハリカ(広瀬)や林田亜乃音(田中裕子)たちのその後を描いた。亜乃音は偽札事件の犯人として逮捕され、持本舵(阿部サダヲ)と青羽るい子(小林聡美)は逃亡。ハリカは誰もいなくなった亜乃音の家に1人で住んでいたが、家宅捜索に来た警察に見つかり、少年院に送られる。その後、余命わずかだった舵を看取ったるい子も出頭し、逮捕される。

 月日がたち、3年の刑期を終えて出所した亜乃音。ハリカは何もなかったかのように彼女を迎え、るい子と3人での共同生活が再び始まった。るい子の目にだけは、幽霊になった舵の姿が見えていた。その晩ハリカは、「帰れる場所ができたからこそ、自分の力でがんばってみたい」と一人暮らしを宣言した――という展開だった。

 バッドエンドを予想する声もあったが、最初から余命わずかだとわかっていた舵を除けば、主な登場人物はそれなりに幸せになったという穏やかな結末。舵も、本来なら一人孤独に死んでいくはずだったのに、人生の最後に愛される喜びを知り、ささやかな幸せを感じながら息を引き取ったのだからハッピーエンドと言えなくもない。最後に幽霊として登場したのは蛇足な感じもするが、視聴者にわかりやすく救いを持たせたということだろう。

 さて、ドラマも完結したので、本作が何を描きたかったのかを考えてみたい。放送期間中は「話がどこに向かっているのかわかりにくい」「意味がよくわからない」との声が多く、途中で脱落した視聴者も多かった。脱落しなかった視聴者は、「最後まで見続ければ意味が分かるはず」と信じていたはずだ。

 最終回の予告では「すべての物語は、この結末のためにあった」とのあおり文句が使用されていた。そのため、何かどんでん返しが起きたり、最後に衝撃的な事実が明かされたりするのではないかとの予想もあった。実際には急展開でハッピーエンドに収まったため、良かったと思う半面、肩透かしをくらったように感じたのも事実だ。

 ただ、あおり文句を文面通り素直に受け取れば、他人にすぎないハリカや亜乃音たちがこれからもずっと家族のように暮らしていくことがこのドラマの結末であり、脚本の坂元裕二氏はそれを描くために10話を費やしたということなのだろう。本作については当初より「ニセモノから始まり、真実の人間愛を見つける人生という冒険」を描く作品であると喧伝されていた。全編が完結した今、まさにその通りであり、そこから一歩も動かなかった作品であるといってよい。

 放送前の触れ込みと実際の内容が異なるドラマの少なくないなかで、当初掲げたテーマをきっちりと守り切った『anone』はほめられるべきだと思う。だが、その一方で「5話あたりでそのテーマは十分描けていたのでは」との思いもぬぐえない。5話の時点でハリカたちの「偽物家族」は幸せに暮らしており、理市(瑛太)が現れなければ4人はそのまま平穏に暮らすことができたはずだ。劇中で偽札づくりが始まったことで話の焦点がブレ、迷走している感じを視聴者に与える結果となってしまった。

 結論として、意図したテーマは確かに描き切ったかもしれないが、もともと10話を要するほどのテーマではなかったため、無駄な登場人物と無駄なエピソードで引き延ばした作品だった、というのが本作に対する筆者の評価だ。もしこれが2時間の映画作品だったら、映画通が好む名作としてかなり評価されたはず。いろいろと書ききれないので省略するが、非常にもったいない作品だった。

 脚本の坂元氏は、21日に更新したインスタグラムで「これにてちょっと連ドラはお休みします」と宣言した。またいつの日か新たな作品を引っ提げて帰ってくる日を待ちたい。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)

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