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有馬賢治「今さら聞けないマーケティング 基礎の基礎講座」

うまい棒とガリガリ君が、ずっと売れ続けている「本当の理由」

解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=武松佑季
うまい棒とガリガリ君が、ずっと売れ続けている「本当の理由」の画像1うまい棒(「Wikipedia」より/天然ガス)

「日本企業には優れた技術があるが、マーケティングのノウハウがないために海外企業に負けてしまう」という解説がよく聞かれ、書店にはマーケティングに関する書籍があふれている。これまで本連載では、マーケティングにおける4Psに沿って売るための手段を解説してきたが、消費者行動について分析するのも重要だ。そこで、今回は消費者行動のなかでも初歩となる消費者心理について、立教大学経営学部教授の有馬賢治氏に解説してもらった。

「想起集合」と「考慮集合」

――競合商品のなかでも、当たり前ですが売れるものと売れないものがあります。消費者行動の基本として、商品を選ぶ際にどのような心理が消費者に働いているのでしょうか。

有馬賢治氏(以下、有馬) ある分野のなかで商品を思い起こすとき、真っ先に思い浮かぶいくつかの企業名やブランド名があると思います。メジャーな分野であれば、4~6個の名前を挙げることは難しくはないでしょう。これらの企業名やブランド名で想起された一群のものを「想起集合」といいます。

――たとえば車の企業名だったら「トヨタ」「日産」「ホンダ」「マツダ」、ビールのブランドだったら「一番搾り」「スーパードライ」「黒ラベル」「ザ・モルツ」といったものが一般的にはまず浮かびますね。

有馬 はい。そして、それらの分野から商品を選んで購入することになった場合、特に強いこだわりがなければ、想起されたもののなかから選んで決めるというのが一般的な消費者の購買行動でしょう。消費者にとって想起集合のなかのブランド同士は、どれを選んでもそれなりに満足できる代替案の集まりとして思い浮かんだものです。企業側の立場で考えた場合、買ってもらうためには顧客の想起集合のなかにまず入る必要があることになります。

――逆をいえば、この想起集合に入らなければ購入される可能性は低くなると。

有馬 そうです。ライバルを差し置いて顧客の想起集合に入り、さらに入るだけでなく想起集合のなかでもより上位に想起してもらうために、企業はマーケティングを駆使するのです。ただし、想起されるだけでは実は不十分で、最終的な購買対象の候補にみなされる必要があります。このように、消費者が購買を前提に比較検討対象とするブランドの一群を「考慮集合」といいます。一般に、その商品カテゴリーの有名ブランドとして高く認知されていればいるほど、考慮集合に含まれる可能性が高くなります。

大手企業を相手に奮闘する「ガリガリ君」と「うまい棒」

――考慮集合に入るためには、企業にとってはどのようなマーケティングが必要なのでしょうか。

有馬 顧客が必要を感じたときに明確に思い起こされ、購買の検討対象となるように、企業は広告などでメッセージを送らなければなりません。それも単発ではなく、頻繁に送り続ける必要があります。さらに、購買の候補に入れてもらうためには魅力的に消費者に映らないといけませんので、広告などは効率よりも効果を重視して、広く長く発信し続ける必要があるわけです。最近のSNSでの情報発信は、こうした想起の誘発に効果のある新しいコミュニケーション方法だと思います。

――想起集合の上位にあるものは大企業の商品や、シェアを多く占めている商品が多いかと思いますが、そうでない企業やブランドでうまく想起集合、考慮集合に入っている商品はありますか?

有馬 例えば、アイスの分野で考えると、ロッテや明治といった大企業の商品が想起集合の上位にあがりやすいなかで、赤城乳業の「ガリガリ君」はよく知られていますし、ロングセラーにもなっています。お菓子でいえば、やおきんの「うまい棒」も同様です。これらは長期的な広告や変わり種の味を展開するなど話題性を頻繁に持たせることで消費者が思い起こしやすくする工夫をしています。このように、消費者にリマインドされる努力を続けることが、常に想起集合の上位にいられる要因ではないかと思います。

――日々のマーケティングが大切なのですね。ありがとうございました。
(解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=武松佑季)

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