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孫崎享「世界と日本の正体」

米朝首脳会談、開始直後にトランプが打ち切りか…朝鮮半島の緊張、米国にとって好都合

文=孫崎享/評論家、元外務省国際情報局長
米朝首脳会談、開始直後にトランプが打ち切りか…朝鮮半島の緊張、米国にとって好都合の画像1トランプ大統領(AP/アフロ)

 北朝鮮で金正恩朝鮮労働党委員長と会った韓国の鄭義溶大統領府国家安全保障室長は米国を訪問し、米朝首脳会談を望む金委員長の意向を伝達し、これを受け米国のトランプ大統領は、2カ月以内に金委員長と会談する用意のあることを発表した。過去に現職の米国大統領が北朝鮮指導者と会談したことはない。米朝首脳会談が実現すれば「歴史上初」となる。トランプ大統領はこれに興奮し、世界のマスコミは大々的に報じた。

 バスに乗り遅れてはならじと、日本政府は醜い姿を示している。過去に安倍晋三首相は「対話のための対話は意味がない」と繰り返してきている。1月26日付産経新聞は、次のように報じている。

<安倍晋三首相は26日午前の参院本会議での代表質問で、朝鮮半島情勢をめぐり「(韓国)平昌五輪の成功に向けて最近、南北間で対話が行われていることは評価するが、その間も北朝鮮は核・ミサイル開発を継続している」と述べた。その上で「北朝鮮が非核化の約束をほごにして、核・ミサイル開発を進めてきた経緯を踏まえれば、対話のための対話では意味がない」と強調した>

 しかし、米朝首脳会談の可能性が出るや、対応を一変した。今、北朝鮮との対話を模索しているという。3月22日付共同通信はこう報じている。

<日本政府は21日までに、安倍晋三首相と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長による首脳会談について、複数のルートを通じて北朝鮮側に意欲を伝達した。国交正常化後の経済協力に言及した2002年の日朝平壌宣言を踏まえ、同宣言の履行が北朝鮮の利益になるとの立場を共有することで、日本人拉致と核・ミサイル開発問題の解決を求める狙い。複数の日朝関係筋が明らかにした>
 
 無節操の極みである。

強まる悲観論

 米朝首脳会談の成功の見通しは、決して明るいものだけではない。トランプ大統領が米朝首脳会談を発表して以降、米国メディアが米朝首脳会談を成功させるのはいかに難しいかを指摘するにつれ、トランプ大統領自身変化した。3月10日、ペンシルベニア州で行われた支持者集会で、米朝首脳会談について「世界にとって最高の合意ができるかもしれない」と述べると同時に、「早々に立ち去るかもしれない」とも述べ、成果なく失敗する可能性もあるとの認識を示した。

 さらに中国の見方も楽観論ではない。3月22日付人民網は「朝鮮半島問題解決の知恵を歴史から汲み取る」と論評した。要点は以下のとおり。

・これは得がたい重要な一歩であり、国際社会は一致してこれを支持し、一層の前向きな進展を期待している。だが同時に、朝鮮半島情勢の歴史的推移は各国に、情勢の進展、関係の立て直しが常に極めてもろいことを警告している。

・歴史の経験は同様に、ひとたび関係国が冷静さを失い、「利己的」変化を求める盲動に固執すれば、交渉のチャンスはたやすく失われ、もともとの相互信頼不足がさらに悪化することを示している。

・今後の道程がどうであれ、各国は辛抱強さと注意深さを保つべきだ。

孫崎享/評論家、元外務省国際情報局長

孫崎享/評論家、元外務省国際情報局長

東京大学法学部在学中に外務公務員上級職甲種試験(外交官採用試験)に合格。1966年外務省入省。イギリス陸軍語学学校、ロンドン大学、モスクワ大学にてロシア語を習得し、在ソビエト連邦大使館を経て、1985年在アメリカ大使館参事官(ハーバード大学国際問題研究所研究員)、1986年在イラク大使館公使、1989年在カナダ大使館公使を歴任。1991年から1993年まで総合研究開発機構へ出向。駐ウズベキスタン大使、国際情報局長、駐イラン大使を歴任。国際情報局長時代は各国情報機関と積極的に交流。2002年より防衛大学校教授。この間公共政策学科長、人文社会学群長を歴任。2009年3月退官。

Twitter:@magosaki_ukeru

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