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上昌広「絶望の医療 希望の医療」

都心部の総合病院、経営危機が深刻化…臓器別の外科医、食えない時代へ

文=上昌広/特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長

総合病院の経営は悪化

 私は、我が国の財政状況を考えれば、診療報酬を抑制するのはやむを得ない。ただ、このまま規制を緩和することなく、全国一律に診療報酬を引き下げれば、やがて「倒産」する病院が出てくる。まっさきに倒産するのは、物価の高い都心部の病院だ。

 都市部の病院はコスト削減のため、さまざまな努力を積み重ねてきた。その代表が「選択と集中」だ。たとえば、首都圏の場合、がんではがん研有明病院、心臓病では榊原記念病院、甲状腺疾患では伊藤病院のような専門病院に患者が集中し、このような病院の経営は概して良好だ。

 一方、「選択と集中」が困難な総合病院の経営は悪化している。学生教育のため、患者が激減している産婦人科や小児科を閉鎖できない東京女子医大、日本医科大学などの大学病院の経営難は、すでに多くのメディアで報じられている。最近、三井記念病院が債務超過に陥ったという報道まであった。このままの状態が続けば、都心部の病院の再編は避けられそうにない。

 では、地方都市の医療機関はどうなるだろう。こちらも診療報酬抑制に合わせて、その在り方が変わりつつある。

「これからの地方病院経営の肝はコストダウン」と内科医で相馬市長(福島県)を務める立谷秀清氏は言う。立谷氏は、この地域の医療の「責任者」だ。公立相馬総合病院の管理者、自らが設立した医療法人社団茶畑会の理事長、さらに経営難に陥った地元病院の理事も務める。

 感心するのは、地域内で医師の配置をうまく誘導していることだ。その基準は患者のニーズと病院の経営状況だ。相双地域には4つの公立病院と8つの民間病院が存在する。人口減が続くこの地域で、将来的には集約化されるだろうが、現状では、いずれも地域に必要不可欠だ。赤字が補助金で穴埋めされる公立病院はともかく、民間病院は稼がなければならない。

 ところが、これが難しい。どう対応しているのだろうか。私は民間病院が内科・透析・整形外科、公立病院が外科・救急・産科、開業医が眼科・皮膚科と棲み分けが進みつつあるように感じる。もちろん、棲み分けの理由は経済性だ。整形外科や透析施設の収益性が高いことはいうまでもない。意外なのは内科だ。内視鏡などの技能がない「普通の内科医」の売上は少ないと考えられている。

上昌広/特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長

上昌広/特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長

1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
医療ガバナンス研究所

Twitter:@KamiMasahiro

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