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高安雄一「隣国韓国と日本の見方」

韓国政治への大いなる誤解…「国会先進化法」で乱闘イメージ払拭へ

文=高安雄一/大東文化大学教授
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韓国政治への大いなる誤解…「国会先進化法」で乱闘イメージ払拭への画像1文在寅大統領(ロイター/アフロ)

 韓国の国会と聞くと、乱闘騒ぎが頻発しているイメージを持つ人がいるのではないだろうか。2004年に盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領の弾劾訴追案を決議する際に大乱闘騒ぎが起こった。さらには2008年には米韓FTAの批准をめぐり、消火用ホースでの放水、消火剤の噴射、バリケードが構築されそれをハンマーでたたき壊すなど、国会内での出来事とは思えない珍事が繰り広げられ、この映像は世界に配信された。

 韓国もこのような国会での乱闘が頻発しているわけではないが、ごくたまに起こる乱闘騒ぎがあまりにも派手であったため、ありがたくないイメージを国内外に持たれることになってしまった。当事者である国会議員の間でも、国会で乱闘が起こらなくするべく状況を改善しようという動きが党派を超えて出るようになり、最終的にまとまったものが、いわゆる「国会先進化法」である。

 国会先進化法は新しくできた法律ではなく、正式名称は、2012年5月に国会を通過した「国会法一部改正法律」、すなわち、既存の「国会法」の一部を改正するための法律である。この国会先進化法については、一部で「与野党で争いがある法案は5分の3の賛成がないと国会を通過させることができない(この数値が3分の2とされている場合もある)」という誤解を持たれているようである。結論を先に示すと、法案を通過させるためには、今も昔も過半数の賛成を得ればよく、過半数を超える議員の賛成が必要なケースは、国会を通過したものの大統領が再議を要求した法案の再可決、法案ではないが大統領の弾劾訴追の可決(共に3分の2)などに限られる。

 韓国は大統領制であり、大統領の出身政党が与党とされる。よって与党が議会の第一党とは限らず、第一党であったとしても過半数を制しているとは限らない。その場合は野党へ妥協しない限り、政府の政策が実現する余地が大きく狭まる。一方、与党が過半数の議席を持っていれば、法律改正を伴う政策を実現するハードルは一気に下がる。

 しかしながら、もしも誤解されているように、法案を成立させるために議員の5分の3(あるいは3分の2)の賛成が必要となれば、与党が国会議員の過半数を占めた場合でも、野党の協力なくしては政府提出法案を成立させることができなくなる。ちなみに1987年の民主化以降について見ると、与党議員が議席数の5分の3を超えたことはない。つまり仮に誤解が正しければ、民主化後の韓国が経験していない与党の地滑り的勝利がない限り、政策遂行が事実上困難になるが、実際は過半数で法案は可決する。

韓国の立法過程

 国会先進化法で何が変わったのであろうか。これを知るための基礎知識として韓国の立法過程を説明する。

 法案はまずは国会議長が議会に報告し、所管する常任委員会に回し、常任委員会で審議が行われる。可決されれば、次に法制司法委員会に回され、体系・語句審査が行われ可決されたのち、本会議で最終的な採決が行われる。また院内交渉団体も重要な概念である。国会議員を20名以上有する政党が院内交渉団体となる。現時点での院内交渉団体は、与党である「共に民主党」、野党である「自由韓国党」「正しい未来党」である。

高安雄一/大東文化大学教授

高安雄一/大東文化大学教授

大東文化大学経済学部教授。1966年広島県生まれ。1990年一橋大学商学部卒、2010年九州大学経済学府博士後期課程単位修得満期退学。博士(経済学)。1990年経済企画庁(現内閣府)に入庁。調査局、人事院長期在外研究員(ケルン大学)、在大韓民国日本国大使館一等書記官、国民生活局総務課調査室長、筑波大学システム情報工学研究科准教授などを経て、2013年より現職。著書に『やってみよう景気判断』『隣の国の真実 韓国・北朝鮮篇』など。
大東文化大学経済学部高安雄一プロフィールページ

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