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江川紹子の「事件ウオッチ」第100回

麻生財務相、問題発言に対して「誤解」連発、条件付き「謝罪と訂正」…国会発言削除の危険性

文=江川紹子/ジャーナリスト
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「あったかどうか、わからない。ただ、もし、あなたが誤解するような事態が生じたんだとしたら、謝罪します」

「誤解」で責任の一部を転嫁するだけでなく、問題を仮定のものにする修辞で、「謝罪」はさらに薄く希釈されているのだ。こうした言い回しからは、「本当は、そんなはずはないんだけど、あなたの理解が悪くて誤解した」という不満すら、かぎ取ることができる。自分が誤った発言をしてしまった、という悔いや反省は、かけらもない。

 彼は、記者会見で「新聞は努めて読まないようにしている」とも言った。読まないようにしている人が、なぜ「1行も載ってない」「一面に載らなかった」などと言えるのかという、誰もが気付きそうな自己矛盾にも、彼はまったく頓着しない。

 とにかく非を認めたくない。その一点だけは、「誤解なく」伝わってくる。俗に「謝ったら死ぬ病」とも言われるらしいが、自分の過ちを素直に認めることができず、年を重ねてプライドばかりが肥大してしまった人間の、非常に残念な姿がそこにある。

 これが、私たちの国の副総理、すなわちナンバー2の態度だと思うと、たまらなく悲しくなる。これまで、自分を省みることなく、ここまで来たのだろうし、今後もその姿勢が変わることはないだろう。私たちは、そういう人をこれからも副総理の地位につけておくのだろうか。

強弁の末に責任転嫁した麻生氏

 ところで、麻生氏の今回の問題発言があったのは、3月29日の参院財政金融委員会だ。米国を除く11カ国による環太平洋経済連携協定(TPP11)が今月8日、チリ・サンディアゴで署名されたことについて、彼はこう述べた。

「TPP11というのが、日本の指導力で間違いなく締結された。こないだ茂木大臣(経済再生担当相)、0泊4日でペルー(実際はチリ)往復しておりましたけど、日本の新聞には一行も載っていなかったですもんねぇ。本人としては、はなはだ憤まんやるかたなかったんだと思いますけど。

 まあ、日本の新聞のレベルってのはこんなもんなんだなと思って、経済部のやつにぼろかすに言った記憶ありますけど。みんな、森友(問題)のほうがTPP11より重大だと考えているのが日本の新聞のレベル。政治部ならともかく経済部までこれかと言って、おちょくり倒した記憶がありますけども。これはものすごく私は大きかった条約締結のひとつだったと思う」

 政府の一員として、TPP11が署名までこぎつけた意義を強調することにかこつけての、新聞批判だ。

 しかし、すでに報じられているように、新聞各紙は経済面などで大きくTPP11の署名が行われた事実を報じ、その内容なども解説していた。翌日の同委員会で、公文書改ざんに至った森友問題を軽んじているのではないかと野党から追及されると、麻生大臣は新聞への不満を口にしつつ、こう述べた。

「そういった印象を与えたというのであれば、その点に関しては訂正申し上げます」

「印象」という言葉に、力を込めた。ここでも、「であれば」という条件付きの「訂正」である。

 さらに、「訂正したほうがいいのでは」と促されると、麻生氏は以下のように答弁した。

「日経なんて、日経は間違いなく(TPPが)1面だと思ったら、まったく出ていませんでしたので、それを申し上げたんですが、森友と比較したのがよろしくないという点に関しては、訂正、反省をいたします」

江川紹子/ジャーナリスト

江川紹子/ジャーナリスト

東京都出身。神奈川新聞社会部記者を経て、フリーランスに。著書に『魂の虜囚 オウム事件はなぜ起きたか』『人を助ける仕事』『勇気ってなんだろう』ほか。『「歴史認識」とは何か - 対立の構図を超えて』(著者・大沼保昭)では聞き手を務めている。クラシック音楽への造詣も深い。


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