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江川紹子の「事件ウオッチ」第100回

麻生財務相、問題発言に対して「誤解」連発、条件付き「謝罪と訂正」…国会発言削除の危険性

文=江川紹子/ジャーナリスト
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「森友と比較したのがよろしくないという点に関しては」という、これまた条件付き限定的な「訂正」だった。しかも、日経新聞は3月9日付夕刊の1面でTPP11調印を報じ、翌10日付朝刊でも取り上げている。またもや、事実に反する弁解で、傷口を広げた。

 その後、「撤回されたほうがいいのでは」との質問があり、ようやく冒頭の「謝罪」となった。しかも、この前に、次のような言い訳がついた。

「TPPに関して、まったく記事が出ないところが問題だと申し上げたかったので」

「まったく記事が出ない」が、まったく事実無根であることは前述の通り。一般紙もTPP11については大きくこれを報じている。しかも、その事実は、最初の発言直後に報道もされていた。それにもかかわらず、「まったく記事が出ない」と強弁を続け、しかも「誤解」「あったとすれば」という責任転嫁と条件をつけての「謝罪」である。これを恥の上塗りと感じない感覚にも驚く。

議事録から削除された議員らの不適切発言

 なぜ、ここで麻生氏の発言を詳しく記したかというと、これがきちんと国会の議事録に残されない心配があるからだ。このところ、国会議員の不適切発言が議事録から削除される、ということが相次いでいる。

 たとえば、自民党の渡辺美樹参院議員が3月13日の参院予算委員会の公聴会で、公述人として意見を述べた過労死遺族の前で「お話を聞いていると、週休7日が人間にとって幸せなのかと聞こえる」と発言して問題になった。渡辺氏が創業した居酒屋チェーンに勤務していて過労死した女性の遺族も、抗議の書面を送った。渡辺氏は発言を謝罪し、自ら議事録からの削除を求めたという。

 また、同じく自民党の和田政宗参院議員が、公文書改ざんをめぐる集中審議が行われた3月19日の参院予算委員会で、太田充・理財局長に対して、このような質問を行って問題になった。

「まさかとは思いますが、太田理財局長は、民主党政権時代に野田総理の秘書官も務めておりまして、増税派だから、アベノミクスをつぶすために、安倍政権をおとしめるために、意図的に変な答弁をしているんじゃないか」

 太田局長は、「いくらなんでも」と3度繰り返し、これを強く否定した。野党の抗議があり、和田氏は議事録から削除することに同意。自民党が削除を求めて理事会で決定された。

 与党議員以外でも、たとえば昨年11月15日の衆院文科委員会で、自民の石破茂元幹事長、立憲の福山哲郎幹事長、希望の玉木雄一郎代表の3氏を犯罪者呼ばわりした維新の足立康史衆院議員の発言は、各党の抗議を受けて、議事録から問題部分が削除された。今、公表されている議事録では、その部分が「――――」となっていて、なんらかの発言があった痕跡は残しつつ、内容はわからなくなっている。

 渡辺氏や和田氏の発言も、そのように処理されるのだろうか(本稿執筆時点では、まだアップされていない)。

 そうすると、たとえば和田発言の翌日の参院財務金融委員会で野党議員から、和田氏の発言内容を挙げたうえで「部下が辱めを受けているのに抗議しないのか」と問いがあり、それに対して麻生財務相が「少なくとも、その種のレベルの低い質問というのはいかがなものかと軽蔑はしますな」と述べたやりとりなどは、どうなってしまうのだろう。これも、連動して消されてしまうようなことがあるのだろうか。

 このように、当人が認めれば問題発言を議事録から削除するのが当たり前に行われるようでは、麻生氏の一連の新聞への文句も、同氏が不適切と認めて削除を求めれば、議事録から消されてしまいかねない。もちろん、そのような事態は絶対にあってはならない。

 議事録からの削除は、公的記録からの消去であり、事実がなかったように変えてしまうという意味で、歴史の改ざんでもある。どんな問題発言であっても、その発言をしたのが事実なら、それは当該議員を評価するための材料のひとつだ。

江川紹子/ジャーナリスト

江川紹子/ジャーナリスト

東京都出身。神奈川新聞社会部記者を経て、フリーランスに。著書に『魂の虜囚 オウム事件はなぜ起きたか』『人を助ける仕事』『勇気ってなんだろう』ほか。『「歴史認識」とは何か - 対立の構図を超えて』(著者・大沼保昭)では聞き手を務めている。クラシック音楽への造詣も深い。


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