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米国、日本に力ずくで輸入拡大措置か…

文=斎藤満/エコノミスト
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米国、日本に力ずくで輸入拡大措置か…の画像1アメリカのドナルド・トランプ大統領(写真:AP/アフロ)

 米国のドナルド・トランプ大統領が仕掛けた貿易戦争が、世界の金融資本市場を揺さぶっている。「常識」が通じないトランプ大統領ならではの不安と、貿易戦争がもたらす世界貿易の縮小、世界景気の悪化懸念がある。

 米国株は1日に1000ドルも下落するような不安定な状況に陥り、投資家心理を示す恐怖指数(VIX)は一時20台で推移し、長期金利は低下している。日本でも、日経平均株価が一時2万1000円を割り込んだ。

中国を潰さず、利益を搾り取りたい米国

 貿易戦争といっても、ことは単純でない。表向きは、米国の「ラスト・ベルト」といわれる、貿易に敗れて経済が沈滞した地域の仕事を失った人々のために貿易戦争で勝利し、米国製造業の復権を目指しているように見える。しかし、貿易戦争を利用して利益を得ることを画策する、トランプ大統領の背後にいる勢力の意向も無視できない。欧州系のロスチャイルドやニューヨーク系のロックフェラーなど、国際金融資本も大きな影響力を持っている。

 彼らの最大のターゲットは中国だ。トランプ大統領は習近平国家主席との間で「米中新冷戦」を画策し、あからさまに中国との貿易戦争を宣言してはばからない。背後の国際金融資本も、これに乗じて中国における多くのビジネス・チャンスをうかがっている。ここで注意すべきは、彼らは中国から最大の利益を得たいので、中国を潰してしまっては意味がないということだ。つまり、ある程度中国を太らせた上で搾り取れる分は搾り取るという作戦である。

 その際、トランプ大統領は米国の年間7000億ドル以上の貿易赤字を「武器」として使っている。経済学に造詣のある「常識人」なら、各国が比較優位を発揮して貿易を拡大することが世界経済の利益であり、それゆえ国ごとに貿易赤字や黒字が発生することは自然で、それが国の勝ち負けを示すものでないことは理解している。米国の巨大な貿易赤字も、米国自身がつくれないものを安く海外から購入しているからで、米国人の利益にもなっている。

 ところが、その点で「非常識」なトランプ大統領は、米国に対して巨額の貿易黒字を出す中国や日本、ドイツなどは「なんらかの『不正』をして黒字を出し、米国の生産機会や職を奪っている」との論理展開で、これらの国を攻撃し、米国製品の売り込みや相手国市場の開放を通じて、米国のビジネス・チャンスを拡大しようとしている。その点で世界貿易機関(WTO)は邪魔になるため、その体制を崩壊させようとしている。

 米国は米中や米日など2国間の直接交渉のかたちをとり、力ずくで市場をこじ開け、拡大する道をとろうとしている。環太平洋経済連携協定(TPP)では十分な利益を得られないとして、これを無視し、各国と2国間の自由貿易協定(FTA)を結び、米国の貿易赤字を担保にして米国企業の商機拡大を図ろうとする。

 トランプ大統領の背後にいる欧州系金融資本は中国の「一帯一路」に便乗し、NY系金融資本は中国の金融自由化や金融機関への資本参加を狙い、不良債権ビジネスを狙う。

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