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楽天市場、店舗撤退ラッシュの予兆…高額な「楽天税」上納に嫌気、使いづらさもアダに

文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

中核事業の楽天市場の不透明感が株価下落を招く

 楽天の業績は決して悪くはない。2017年 12月期の連結決算は、売上高が前年比20.8%増の9444億円、純利益が前年の2.9倍の1105億円だった。前年に買収した爽快ドラッグが貢献したほか、クレジットカードなどの金融部門が伸びたことが影響した。

 業績は悪くないが、一方で株価は冴えない。昨年5月下旬〜6月下旬には1300円台後半を付けていたが、その後は下落の一途をたどり、今年3月には900円近辺にまで低下している。中核事業の楽天市場において不透明感があることが影響しているとみられる。

 17年12月期の楽天市場を含む国内EC流通総額は、前年比13.6%増の約3兆4000億円と順調に伸びている。しかし、楽天はポイント還元策などで販促費が膨らみ、収益性が悪化した。

 楽天は15年7〜9月期決算から楽天市場の実態を示す流通総額の開示をやめている。それ以降は楽天トラベルの数字を加えた流通総額の開示となっているため、楽天市場の実態がわからなくなっている。これは、楽天市場の低迷を隠すために行われているともささやかれ、不透明感を強めることにもつながった。

 競争環境の激化も懸念されている。ヤフーはヤフーショッピングの出店を無料にするなどして事業を急拡大させている。アマゾンは膨張が止まらず、17年度の日本法人のドルベースの売上高は119億700万ドル(約1兆3000億円)と前年度から10.3%増加している。

 競合、特にアマゾンとの比較で、楽天市場の使い勝手の悪さが依然として足を引っ張っている。楽天はテナント型のため、同じ商品を複数の店舗が異なる価格で販売することもあり、選択しづらくわかりにくい。「一物一価」が原則のアマゾンとは対照的だ。レビューが店舗の数だけあることもわかりにくさに拍車をかけている。楽天のイメージカラーである赤を多用していることで、見栄えが良くないという声もある。

 楽天市場から撤退する店舗も相次いでいるという。そのひとつの理由として、高い費用がある。出店者は初期登録費や月額出店料に加え、システム費や広告費といった“楽天税”を毎月売上高の約1割を楽天に納めなければならず、その負担の重さに嫌気しているというのだ。競争の激化で費用に見合う収益を稼ぎにくくなっているといえるだろう。

 楽天市場の将来に不透明感が漂うなか、事業拡大策を矢継ぎ早に繰り出している楽天。事業全体をどのように融合し成長させていくのかが問われそうだ。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。

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