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筈井利人「陰謀論を笑うな!」

元スパイ襲撃事件、イギリスに重大な不審点…捜査拒否、ロシア関与の根拠提示も拒否

文=筈井利人/経済ジャーナリスト
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元スパイ襲撃事件、イギリスに重大な不審点…捜査拒否、ロシア関与の根拠提示も拒否の画像1「Gettyimages」より

 英国南部ソールズベリーで3月4日、ロシアの元情報機関員セルゲイ・スクリパリ氏と娘のユリアさんが神経剤ノビチョクで襲撃されたとされる事件は、欧米とロシアが互いに外交官追放に踏み切る事態に発展し、国際的な緊張を広げている。

 しかしこの問題は、そもそもの出発点に大きな疑問が横たわる。英国は襲撃にロシアが関与していると主張しているが、いまだにその証拠が提示されていないのだ。今から15年前、米英が実際には存在しない大量破壊兵器の保有を口実にイラクを攻撃し、甚大な犠牲と被害をもたらしたイラク戦争の過ちを繰り返しかねない。

 事件発生後、英国のメイ首相は「ロシアが関与した可能性が極めて高い」と断じ、ロシア外交官を追放。トランプ大統領率いる米国や、欧州連合(EU)加盟国のうちドイツやフランスなどもこれに追随した。EUは事件にロシアが関与した可能性が高いとする英国の主張を「団結して支持する」との声明を公表している。

 しかし、この欧米の行動には批判が少なくない。EU加盟28カ国(離脱を決めた英国を含む)の約3分の1は外交官追放に追随しなかった。「ロシアと対話のルートを絶やしたくない」(オーストリア)、「英国とは連帯したいが、調査も必要」(ギリシャのチプラス首相)と、バタバタ追放を決めた諸国よりむしろ冷静さが目立つ。

 それというのも、英国はロシアが事件に関与した証拠を示していないからだ。ロシアのプーチン大統領は、ロシアを非難するのはばかげたことだと否定。ロシアの化学兵器は国際監視の下で廃棄しており、存在しないと強調している。ロシアは事件について英国と協力して捜査する用意があるとしているが、英国側は協力を拒み、国際法に沿った問題解決も拒否している。

神経剤、ロシア製との証明できず

 ロシアが関与したという英国の公式見解を信じるには、事件には不審な点が多すぎる。襲撃に使われたとされる軍事神経剤ノビチョクの開発に関わったロシア人科学者によれば、ノビチョクには解毒剤がなく、生命維持装置を外せばスクリパリ氏親子は死ぬといわれていた(3月22日付ニューズウィーク)。

 ところが4月5日、娘のユリアさんが事件後初の声明を出し、自身の容体が快方に向かっていることを明らかにした。さらに翌6日、親子が入院する病院が、スクリパリ氏が重体を脱し、「急速に回復」していると述べた。事実であれば、親子が盛られた毒は致命的な軍事神経剤などではなかったことになる(ユリアさんは10日までに退院)。

 英政府は、ロシアがノビチョクで親子を襲った可能性が高いというが、根拠は薄弱だ。英国防科学技術研究所は4月3日、使用された神経剤を分析した結果、ロシア製だと証明することはできなかったと明らかにした。
 
 もし使ったのがロシアでないとすれば、誰なのか。旧ソ連崩壊後の1990年代半ば、英国、チェコ、スウェーデン、米国など西側諸国はひそかに化学兵器の研究文書を自国に持ち込み、ロシアを出国した専門家の協力を得て研究を続けたといわれる。これにより開発されたのがノビチョクだとされる。

筈井利人/経済ジャーナリスト

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