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ロシア、欧米各国で選挙介入:欧米が報復措置で「新冷戦」突入…露、亡命者を次々暗殺

文=春名幹男/国際ジャーナリスト
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 これまでも、英国では次のような変死事件が表面化している。1995年、元銀行家イワン・キベリディ氏がカドミウムで毒殺。2006年、元ソ連国家保安委員会(KGB)要員だったアレクサンドル・リトビネンコ氏は放射性物質ポロニウムで毒殺された。エリツィン元大統領に近かった実業家ボリス・ベレゾフスキー氏は2013年自宅風呂で首を吊って死亡、英警察は「自殺」と判断したが、米情報機関は暗殺の疑いを持った。ロシアからの亡命者の暗殺が続いているようだ。

 今回の事件の被害者、「ノビチョク」という名の毒物で襲撃されたセルゲイ・スクリパリ氏(66)は、特殊な毒物が使われた点でリトビネンコ氏の例と似ている。特殊な毒物を使用することによって、反プーチン分子に一層の恐怖感を与える効果がある。

毒性はVXの10倍

 
 ワシントン・ポスト紙のウィル・イングランド記者は1993年、モスクワ東部にあったKGBの拘置所で神経性化学兵器ノビチョクのことを知ったという。この毒物の開発は1987年に開始され、実験も行われたというが、その後の動向は不明だった。毒性は金正男氏毒殺に使われた「VX」の10倍と教えられたという。

 これまでの英当局の捜査では、スクリパリ氏の自宅玄関ドアにノビチョクが意図的に付着させられた疑いがある。スクリパリ氏の妻リュドミラさんは2012年、59歳の時に子宮ガンで死亡、長男アレクサンドルさんは昨年43歳の若さで死亡。死因不明として、墓場を掘り返し、遺体を検査したもようだ。

 スクリパリ氏はロシア軍参謀本部情報総局(GRU)の元大佐。2006年に英国側に機密情報を提供したとして有罪判決を受け、2010年に米国とロシアのスパイ交換で国外退去となり、英国に移住した。

 先月3月4日、前日にモスクワから訪ねてきた娘ユリアさんを連れて車で町の中心部に向かった。2人はショッピングセンターのベンチで意識不明の状態で見つかった。スクリパリ氏は依然重体だが、ユリアさんの容態は安定しているという。スクリパリ氏は、ロシア大統領選の直前に狙われたことからみて、事件を選挙戦に利用しようとした可能性があるとみられている。英当局は事件の証拠を公表していないが、現実には相当の証拠を集積しているとみられている。ロシア側が完全否定している間は、手の内を明かさないだろう。

「新冷戦」の様相は濃厚に

 
 英当局は捜査情報をあまり公開しておらず、犯人像や犯行動機はなお不明。今後、ロシアと欧米が報復合戦を繰り広げた場合、対決の構図は厳しさを増すのは必至だ。ロシアが化学兵器禁止条約を無視して、化学兵器開発を継続していたことなどが判明すれば、「新冷戦」の色彩はますます濃くなるだろう。
(文=春名幹男/国際ジャーナリスト)

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