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JR東日本、保育所開設ラッシュの理由…待機児童解消の救世主か

文=小川裕夫/フリーランスライター
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 江戸川区が始めた保育士確保戦略は、いまや一般的になりつつあり、他区でも追随する動きが見られる。千代田区も同様に保育士の処遇改善費を助成しており、2018年度からは月2万円の奨学金返済支援も追加でスタート。保育士の人材獲得競争は激化している。

 ほかの区が江戸川区を模倣する動きを見せたため、江戸川区はさらなる差別化戦略として学童保育の充実にも力を入れ始めた。未就学児童から就学児童にも子育て支援を広げることで、共働き世帯を呼び込もうとする狙いがある。

 保育所を新たに開設するには、場所の問題もある。近年、「園児たちの遊ぶ声がうるさい」「保育園ができると送迎の自動車往来が増えるから危険になる」といった苦情も聞かれる。周辺住民の理解が得られずに、都内では保育所の新規開設を断念するといったケースも報告されている。

 荒川区は、国家戦略特区を活用。これまで制限されていた都市公園内に保育所を開設することを決めた。荒川区が新たに保育所を開設するのは、都立汐入公園と区立宮前公園の2カ所。広大な都立汐入公園には、保育所のほかに学童クラブも併設される。荒川区汐入地区はJR貨物の操車場が広がるエリアだったが、2000年前後から再開発が始まり、いまやタワーマンションが乱立する。子育て世帯も多く居住するエリアとして変貌したため、保育所の需要が高まっていた。公園という公有財産を保育園に活用することで税金投入を少しでも抑えつつ、荒川区はさらなる人口流入を狙う

遊休地活用に成功したJR東日本

 自治体が保育所整備に動くなか、民間企業でも保育所整備の機運は高まっている。そのトップランナーがJR東日本だ。

 JR東日本が本格的に保育所の整備に取り組むようになったのは、2004年頃からだ。それまでにも、JR東日本は国分寺駅の隣接地に保育所を開設していた。JR東日本の職員は言う。

「埼京線は埼玉県と東京の池袋・新宿・渋谷といった副都心を結ぶ利用者の多い路線です。埼京線は東北・上越新幹線の線路に並ぶように建設されているのですが、新幹線を建設する際に騒音や振動の問題から線路脇に都市施設帯という空きスペースが設けられています。『この緩衝用地を保育所として有効活用できないか?』という打診を地元の自治体からいただき、保育所として活用することになったのです」

 埼京線の都市施設帯という、いわば遊休地を活用することに成功したJR東日本は、ほかのエリアでも遊休地を巧みに活用して保育所を開設。JR東日本が所有する土地は、基本的に駅から近い。会社との動線上にあるので、出勤前に子供を預けて退勤後に引き取ることもできる。保護者にとって、使いやすい保育所として好評を博している。

 自治体が子育て支援施設を充実させる背景には、子育て支援策を手厚くすることで住民増が期待できるほか、企業誘致にもつながるからだ。住民が増えれば住民税が、企業誘致に成功すれば法人税・法人事業税などが一気に増える。保育所の整備は、“住みやすさ”を向上させながらも税収増も両立させる、自治体にとって“おいしい政策”なのだ。

 今後も、子育て支援政策が手厚くなっていくことは確実だろう。待機児童ゼロを目指す自治体の取り組みに注目が集まる。
(文=小川裕夫/フリーランスライター)

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