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日本で「無痛分娩」が普及しない本当の理由…「お腹を痛めて産むべき」という風潮

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「gettyimages」より
 出産は人生の一大事だ。どのような出産方法を選ぶかは、それぞれの妊婦や家族にとって切実で難しい問題となる。


 特に「鼻からスイカを出すよう」とも表現される出産時の痛みにどう向き合うかは大きなテーマだ。そのため、欧米諸国では「無痛分娩」を選ぶ妊婦が増えている。日本産科麻酔学会によると、アメリカでは61%(2008年)、フランスでは約80%(2010年)の人が無痛分娩で出産しているという。

 しかし、日本には「お腹を痛めて産むべき」との考えが根強く、無痛分娩に否定的な人が多いようだ。なぜ、日本では無痛分娩が普及しないのか。45年以上前から無痛分娩を行っている東京衛生病院の原澄子副院長に話を聞いた。

自然分娩ほど普及しない、日本の無痛分娩


 まず、無痛分娩がどのような方法なのかを整理しよう。簡単にいうと、促進剤などを除けば基本的に医療介入を行わない自然分娩(経腟分娩)に対し、薬剤などで陣痛や出産時の痛みをやわらげる分娩方法が無痛分娩だ。

 日本産科麻酔学会によると、現在、日本を含めた多くの国で無痛分娩の主流となっているのは、脊髄を覆う硬膜とその外側を囲む脊柱管の間にある硬膜外腔に薬を投与する「硬膜外鎮痛法」と呼ばれる方法だという。

 一般的に、陣痛の痛みが強くなりだすのは子宮口が3~5cm開くころ。無痛分娩では、その前に背中から細い管を入れて麻酔薬を注入する。そうすることで、投与された薬剤が子宮、腟、外陰部、会陰部から神経を通じて伝わる痛みを遮断し、強い鎮痛効果を得られるそうだ。

 この分娩方法は痛みが少ないほか、産後の母体の回復も早まりやすいというメリットがある。そのため、アメリカなどではポピュラーになっている。

 では、なぜ日本では無痛分娩が自然分娩ほど一般的ではないのか。その理由のひとつに、医療事故のリスクが指摘されている。実際、17年10月には大阪府和泉市の産婦人科医院で無痛分娩中に妊婦が死亡し、大きな問題となった。これについて、東京衛生病院の原副院長は言う。

「10~16年にかけて日本産婦人科医会に報告された妊産婦の死亡事例は271件で、そのうち14件が無痛分娩でした。もっとも、このうち硬膜外麻酔による死亡例は1例のみ。それ以外は、たまたま無痛分娩だったということのようです」(原氏)

 16年に全国の医療施設が取り扱った分娩のなかで、無痛分娩の割合は6.1%(日本産婦人科医会調べ)。271件の死亡事例のうち無痛分娩が14件という割合とも近い数字だ。

「和泉市のケースは、医師が刑事責任を問われた異例の事例です。ことさら大きくリスクが報道されたことにより、無痛分娩の選択を躊躇する人も出てくるかもしれません」(同)

妊婦の母親が無痛分娩に反対するケースも


 しかし、無痛分娩が普及しない背景には、もっと根深い理由が存在する。それは「お腹を痛めて産まないと、子どもに愛情を持てない」という風潮だ。

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