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「近代」と「現代」どこで分けるか答えられる? 歴史家に学ぶ現代史

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「近代」と「現代」どこで分けるか答えられる? 歴史家に学ぶ現代史の画像1※画像:『歴史家が見る現代世界』(入江昭著、講談社刊)

「現代社会」「現代的」「現代の常識」――。

 当たり前のように見聞きする「現代」という言葉だが、それはいつのことを指すのか考えたことはあるだろうか。

 「現代」を広辞苑で調べてみると、「現在の時代、今の世、当世」と記されている。しかし、厳密にいつから現代と称していいのかは判然としない。また、現代よりも少し前のことを近代と呼ぶが、その境目はどこにあるのか。

 当たり前なのに誰も知らない「現代」。その意味を教えてくれる一冊が『歴史家が見る現代世界』(入江昭著、講談社刊)だ。

 本書は、日本出身者として初めてアメリカ歴史学会会長を務めた世界的な歴史研究者である入江氏の著書として2014年に出版されているが、時が移っても「現代」は「現代」として在り続ける。考えれば考えるほど不思議な時代区分を、歴史家はどう考えているだろうか。

時代区分の基準とされてきた「戦争」

 今日の学会でもっとも権威ある歴史家の一人、ケンブリッジ大学のクリストファー・ベイリーの大著『近代の誕生』では、1780年から1914年までの世界史が扱われている。そのことから、フランス革命前夜から第一次世界大戦勃発までが「近代」とする解釈があるという。

 これを軸とするなら、1914年以降が「現代」となる。つまり、第一次大戦、第二次大戦、冷戦にいたる戦争の時代が「現代」にあたるわけだ。とはいえ、二つの大戦も冷戦も隔世の感が否めない。

 そもそも時代区分は戦争を基準に考えるべきなのかという疑問も残る。

 実はこの時代区分の解釈は、すでに歴史家たちの間では時代遅れになっているという。 歴史研究では、どの切り口から歴史をとらえるかで見方は大きく変わる。戦争を軸に考える歴史、国家の枠組みの中でとらえる歴史、外交史や国際関係史のように諸国間の関係から見る歴史などさまざまにある。

 しかし、著者は本書でそのいずれの枠組みでもない新たな歴史的視野を示す。国境を越えた人々のかかわりや、全世界、全人類の関心事を視野に入れた歴史観だ。この視野は「グローバル」「トランスナショナル」と表現される。

「国家」という枠組みを外してみる歴史観

 昨今「グローバル」という言葉に触れる機会は多い。歴史研究では、「国家」ではなく「globe(グローブ)」、つまり、「地球」を枠組みとして考えることを指す。

 そして「トランスナショナル」とは、国家間(インターナショナル)の関係ではなく、その枠組みを越える民間、個人、組織同士の交流を意味する。

 学校の勉強では、世界史は国家間の関係や、その関係性の中で生まれる事象が歴史としての意味を持つ。だが、もはやその認識ではとらえきれないのが「現代」だ。

 交通と情報のインフラの飛躍的な発展、それに伴う人々の移動や経済ネットワークの広がりと価値観の共有。それらはすでに国家の枠組みを越えて歴史を紡いでいる。

 こうした潮流から、著者は「すべての人たちのあいだ、そして人類と自然とのあいだの密接なつながりが認識され、その認識にもとづいた考え方が一般化し、さらに各種活動へと結びつき始めたときに現代は始まったのといえるのではないか」と考えを示している。

 では、具体的にいつからが「現代」なのか。

 この点は歴史家によって見方が変わるようだが、1970年代、もしくは1990年代が「現代」の幕開けだと考える研究者が多いようだ。つまり、1970年代から二十世紀末にかけての時期から、少なくとも2018年現在の今の時点を「現代」と呼んでも差し支えがないだろう。

 日本史で言えば、明治維新から太平洋戦争の終結までを「近代」。それ以降を「現代」とするのが一般的のようだ。しかし、今この瞬間も刻一刻と過去となり、いずれは「現代」ではなく「近代」と呼ばれるようになるのではないか。

 そして、さらに10年、100年と時が経たとき、「現代」は何を象徴する時代として認識されるようになるのだろうか。本書からは、そんな歴史の広さと深さを想像させる知的刺激を得られるはずだ。(ライター/大村佑介)

※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。

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