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セイコー、熊本地震で倒壊の店に一方的に契約解除通告…店主が怒りの告発

文=兜森衛
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騒動は“痛み分け”で収束

 クレドールは「ラグジュアリードレスウオッチ」と呼ばれる、セイコーウオッチの最高級ブランド。フランス語で「黄金の頂」を意味し、単なる時計ではなく宝飾品に近い。価格は1000万円以上するものもザラだ。このため、セイコーウオッチは、一定の販売額を見込めると判定したショップのみに、「オーソライズドディーラー」の認定を与えていた。代表的なのは大手百貨店だが、ソフィ・タカヤナギは創業124年の老舗として、ショップながらクレドールの取り扱いを40年以上認められてきた県内屈指の店舗だった。

「セイコーウオッチは国内最大手ということもあり、結構、傲慢というか、売れない代理店で売るくらいなら自社で売るとか、もっと販売規模の大きな店舗に在庫を移すことも珍しくありません。そのためには、売れない店舗との契約を解除するのが普通です。クレドールはセイコーウオッチの最高級ラインで、そもそも製造数も少ないため、売り上げを取れる店舗優先になりやすいのです。天下のセイコーだから、代理店やショップに対して、なんだかんだと強気です。シチズンやカシオなど、力があって自社の販売力があるところはどこも同じだと思います」(時計業界関係者)

 高柳社長は、今年11月に新店舗が完成するので、それまで認定の存続を再検討してもらおうと交渉したが、かなわなかった。しかも、セイコーウオッチの主力ラインであるグランドセイコーについても、7月から取り扱い解除を通告されてしまった。グランドセイコーは米メジャーリーグ、ロサンゼルス・エンジェルスの大谷翔平選手とサプライヤー契約を締結したセイコーウオッチの主力ブランド。この通告を受けて、高柳社長の堪忍袋の緒が切れた。

 そしてツイッターでの“告発”に至ったわけだが、その直後からネット上は「セイコーごときが調子こくな」「もうセイコーは買わん」とセイコーを非難する声や、「だからって確認書さらすか」と高柳社長の対応を批判する声も続出するなど炎上状態となったため、高柳社長はすぐさま当該ツイートを削除した。

「大変お騒がせしたと反省しております。妻が保管していた確認書をあらためて読んで、怒りが収まらなくなってしまったのです。しかし、お得意様や応援してくれている方々が、店舗に出向いてどうなっているんだとご心配くださり、軽率なことをしたと痛感し、ツイッターを削除いたしました。セイコーさんとは新店舗での再建が始まったら、あらためて交渉できればと思っております」(高柳社長)

 セイコーウオッチ広報宣伝部も「お騒がせして申し訳ありません。タカヤナギ様とは互いの意思の確認が取れなかった。取り消し通告の際、社長が不在だったのも事実。今後は新店舗での再建がスタートした段階で、再交渉したいと考えております」と、再度契約を締結する可能性を示唆した。

 結果的には、両者「痛み分け」に終わった格好だが、熊本は今まさに生活再建のめどが立つか否かの分岐点。米メジャーリーグで大活躍する大谷選手にならい、熊本県民を大いにかせしたいところである(※「かせする」とは「加勢してお手伝いする」という意味の熊本弁)。
(文=兜森衛)

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