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武田薬品、誰のための「7兆円」買収なのか?失敗の懸念広まる、膨張する巨額有利子負債

文=編集部
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なぜ買収しなければならないのか

 株式市場は巨額の財務負担を懸念する。かつて無借金経営だった武田薬品は11年、スイスのナイコメッドを1兆1000億円で傘下に収めるなど大型M&Aを繰り返し、17年末時点の有利子負債は1兆1000億円に上る。3兆円を銀行から借り入れれば、有利子負債は4兆円規模に膨らむ。

 増資による株式希薄化への懸念も強い。提案通りに新株を発行すれば、現在の時価総額(3兆8000億円)を上回る4兆円規模の巨額増資となる。1株当たり利益の大幅な希薄化につながり、株価をダイレクトに押し下げる要因になる。

 巨額な借り入れと大型増資の懸念から武田薬品の株価は下がり続けた。4月25日には一時、4398円(前日比453円、9%安)と急落、年初来安値を更新した。1月10日の6693円から35%安となった。交渉が明らかになって以降だけをとっても2割下げた計算だ。

 それでも買収にこだわったのはなぜか。

 英製薬大手グラクソ・スミスクラインの幹部だったウェバー氏を14年6月、当時の長谷川閑史社長(現相談役)がスカウトした。長谷川氏は買収した海外企業の立て直しを含め、ウェバー氏にしがらみにとらわれない大胆な経営改革を期待した。しかし、成果は十分に上がっていない。

 武田薬品が5月14日に発表した18年3月期の連結純利益(国際会計基準)は、1868億円だった。08年同期の最高益(3554億円)の半分強だ。1999年に糖尿病治療薬「アクトス」を発表して以降、自社開発の大型新薬が出ていないことが大きな要因だ。19年3月期の純利益は、18年実績比で26%減り1390億円になる見込み。シャイアーの買収は業績予想に織り込んでいない。

 一方のシャイアーは創業以来、患者が少ない希少病の治療薬に集中したユニークな会社だ。血友病や注意欠陥・多動性障害(ADHD)の治療薬など40種類の薬品を手がけ、100カ国以上で販売。17年12月期の純利益は約43億ドル(4600億円)。武田薬品を上回る高収益会社だ。

 製薬業界の情報サイト「Answers News」の記事、『2017年製薬会社世界ランキング(速報版)』によると、ドル換算の売上高は武田薬品が18位で、シャイアーが19位。買収が実現すれば、日本の製薬企業としては初めて世界のトップ10入り(9位)を果たす。

BusinessJournal編集部

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