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ケースで見る!「働くハイスペック女子」への処方箋

不妊治療ストレスで休職に陥った外資系勤務キャリア女子…同僚が次々出産でさらに多忙に

文=矢島新子/産業医、山野美容芸術短期大学客員教授、ドクターズヘルスケア産業医事務所代表

 女性は30歳を超えると、卵子の老化とともに徐々に妊娠しづらくなります。また、不妊治療自体も年齢の上昇とともに結果が出にくくなります。しかしながら、30歳で高齢と言われてもピンとこない女性がほとんどでしょう。そんなことは考えず、ひたすら仕事に没頭する20代が過ぎ、現実に直面するのです。女性の社会進出とともに妊娠希望する女性の年齢が高くなり、不妊治療を必要とする女性も増えました。特にキャリアウーマンは晩婚の傾向が強く、Mさんのように働きながら不妊治療を受けることは、最近では決して珍しいことではありません。

 不妊治療には大きなストレスが伴います。身体的な負担はもちろんのこと、精神的、経済的な負担も大きいものです。体外授精には1回30万から40万円ほどかかります。そのため1回のチャンスを最大限に活かしたいと思うのです。採取した卵子のグレードに落胆し、もっといい卵子をつくれるようにと高額な民間療法に手を出すケースもあります。周囲に知られたくない、でも仕事の都合で治療に通うのが難しい、いい卵子を得るために仕事の負荷を減らしてほしい、でも勇気を出して職場に告白しても、ちゃんと配慮してくれるかどうか心配している女性社員は意外に多いものです。このような状況で、不妊治療のために仕事を辞めたいという相談も増えてます。

 しかしながら、不妊治療が成功する保証はありませんから、キャリアの大きな変化につながるような選択は慎重に行う必要があります。このような背景から、雇用者側の意識も変化しつつあります。最近では不妊治療中の女性に対して、期間限定で在宅勤務を認める会社も出てきました。

 不妊治療が必要だと診断されたとき、長期的な不妊治療により気持ちのコントロールができないとき、仕事との両立に限界を感じたときなど、時期やタイミングはさまざまですが、メンタル不調が発生するリスクが高くなります。Mさんのように、不眠などのメンタル関係の症状が出てきたときには、早めに心療内科や精神科を受診しましょう。「妊娠したいので薬を飲みたくない。だから受診しない」「妊娠さえすれば気分が晴れるから大丈夫」と言って、受診を拒否する女性社員は少なくありません。しかし、妊娠はゴールではありません。まずは自分の健康を優先し、その上で妊活を考えましょう。地域によっては、行政が行う不妊専門相談センターやカウンセリングサービスなどもありますので、活用を検討してみてください。

 働くハイスペック女子にとって、結婚、妊娠、子育てとキャリアの両立は永遠の課題です。ひとりで悩まず、周囲が理解し支える。なんら目新しい解決方法ではありませんが、これにつきます。ダイバーシティーが会社を、そして社会を強くします。たくさんのハイスペック女子がいきいきと活躍する社会は、いい社会だと私は思うのです。
(文=矢島新子/産業医、山野美容芸術短期大学客員教授、ドクターズヘルスケア産業医事務所代表)

矢島新子/産業医

矢島新子/産業医

矢島新子
山野美容芸術短期大学客員教授。ドクターズヘルスケア産業医事務所代表。東京生まれ。東京医科歯科大学医学部卒。パリ第1大学大学院医療経済学修士、WHO健康都市プロジェクトコンサルタント、保健所勤務などを経て産業医事務所設立。10年にわたる東京女子医科大学附属女性生涯健康センターの女性外来、産業医として数千人の社員面談の経験より、働く女性のメンタルヘルスに詳しい。著書に『ハイスペック女子の憂鬱』(洋泉社新書)ほか。
株式会社ドクターズヘルスケア

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