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安倍政権の民泊解禁、東京以外の地方には「ただの迷惑」…市民の日常が脅かされる危険

文=小川裕夫/フリーランスライター
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「行政はヤミ民泊事業者を徹底的に取り締まるが、一度民泊を始められてしまうと、廃業に追い込むことは難しい。そのため、民泊を始めさせないよう水際でストップさせることがもっとも効果的な対策です」(前出・自治体職員)

 そうした水際作戦で、もっとも有効打とされているのが課税だ。東京都は2002年に宿泊税(通称・ホテル税)を制定している。ホテル税の税収は観光インフラの整備費用に充てることを名目にしているが、17年に大阪府も導入。京都市も今年中の導入を決めている。ほかにも、北海道や福岡県、金沢市などでホテル税の導入議論は相次いでいる。ホテルから税金を徴収することを事前に通知することで、事業者はホテル税のある自治体えを忌避するというヨミだ。

 しかし、全国47都道府県の知事で組織する全国知事会は、それでは手ぬるいとばかりにホテル税の法定税化を提言している。ホテル税は民泊事業者だけではなく、通常のホテル・旅館業者にも平等に課税される。通常のホテル・旅館業者は旅館業法などで厳しい規制が設けられている。また、旅館やホテルは閑静な住宅街で営業することはできない。そのため、民泊のように責任所在が曖昧になることもなく、周辺住民とのトラブルも少ない。

 ホテル税が課せられることで通常の旅館やホテルも負担を強いられるが、「観光インフラが整備されれば、巡り巡ってホテル・旅館にも恩恵はある」(観光業界関係者)ので、一般的なホテル・旅館関係者からの反対はそれほど大きくはない。むしろ、法定税化でホテル税が全国一律に課されるようになると、厳しくなるのは民泊事業者といわれる。

杉並区の狙い

 さらに、民泊だけをターゲットにした税の制定を検討している自治体もある。それが、東京都杉並区だ。

 杉並区は、すでに東京都が制定したホテル税が適用されている自治体だが、そのホテル税以外にも民泊だけを対象にした法定外税の制定を水面下で始めた。杉並区は人口56万人超という巨大な自治体だが、駅前を除けば繁華街のようなエリアは少なく、むしろ区域の大半は住宅街になっている。

 通常のホテル・旅館事業者を除き、民泊だけをターゲットにした法定外税を検討している背景には、閑静な住環境を守ろうという意図が見え隠れする。民泊事業者だけに重い負担を課せば、民泊事業者は自然と杉並区を回避するだろう。杉並区の民泊だけをターゲットにした法定外税は、今のところ区長が記者会見で言及しただけにすぎない。庁内でも議会でも本格的な議論は始まっていない。しかし、ある23区の職員は言う。

「杉並区は、『現段階では様子見』と言っているようですが、民泊規制は早めに手を打っておかないと取り返しがつかなくなります。だから、水面下で議論が進められていても、いきなり決まってしまう可能性もあるでしょう」

 安倍政権は訪日外国人観光客を増やそうと民泊を猛烈に推進しているが、足下の自治体の民泊を厄介払いする傾向は強まる一方だ。
(文=小川裕夫/フリーランスライター)

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