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孫崎享「世界と日本の正体」

米朝首脳会談、北朝鮮の核兵器完全廃絶は遠のく…米国、韓国での軍事的優位性を維持

文=孫崎享/評論家、元外務省国際情報局長
米朝首脳会談、北朝鮮の核兵器完全廃絶は遠のく…米国、韓国での軍事的優位性を維持の画像1米朝首脳会談 両首脳、シンガポールで初対面(写真:AFP/アフロ)

 12日にシンガポールで開催された、米国のトランプ大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の会談について解説する。

1.トランプ大統領の政策予測

 
 一般的にトランプの言動は予測不能といわれるが、私は「極めて予測しやすい人物である」と思う。トランプが歴代米大統領と異なるのは、極めて早い段階に次期大統領選挙への出馬を表明している点である。通常1期目の米大統領は周りの様子を見て、就任3年目か4年目に次期大統領選への出馬表明をする。しかし、トランプは就任初日から出馬の意向を表明している。

 すでにトランプは次期大統領選に向けた対策チームを立ち上げ、接戦が予想される州に頻繁に出かけている。この選挙チームの特徴は、徹底したマーケット・リサーチ(大統領選に関する世論調査)を行い、これに基づき行動しているという点にある。「徹底したマーケット・リサーチに基づき行動をする」ことが、前回の選挙における勝利につながり、その時のマーケット・リサーチ責任者を現在の選挙チームの責任者に据えている。

 トランプは、このマーケット・リサーチの結果から外れる行動はあまりとらない。トランプの行動が一貫性のない印象を与えるのは、世論動向を探るためにアドバルーンを上げる目的で過激的発言をしてみるからだ。この過激発言は、その後に出る世論調査で支持されないために一貫性を欠く印象を与えるが、最終的には世論に一致させるので、ダメージは負わない。

2.米朝首脳会談前の世論の動向

 まず、トランプ政権内は必ずしも米朝会談に積極的でない。分類してみよう。
 
・会談に積極派―ポンペオ国務長官
・会談に消極的―ペンス副大統領、ボルトン国家安全保障担当補佐官
・中間派―マティス国防長官
 
 そして、会談に積極的といわれるポンペオ国務長官ですら、「完全で検証可能、不可逆的な非核化(CVID)が、受け入れられる唯一の結果だ」と主張していた。しかし、北朝鮮から見れば、米国から完全に体制保障をする約束を取りつけない限り、CVIDを受け入れることは「どうぞ攻めてきてください」という自殺行為にふさわしい。現トランプ政権が、北朝鮮に具体的なかたちで体制保障することはない。とすれば、会談前から米国側が目標点とみなしたCVIDの合意は難しいと予想された。それにもかかわらず、なぜトランプが米朝首脳会談に踏み切ったか。

孫崎享/評論家、元外務省国際情報局長

孫崎享/評論家、元外務省国際情報局長

東京大学法学部在学中に外務公務員上級職甲種試験(外交官採用試験)に合格。1966年外務省入省。イギリス陸軍語学学校、ロンドン大学、モスクワ大学にてロシア語を習得し、在ソビエト連邦大使館を経て、1985年在アメリカ大使館参事官(ハーバード大学国際問題研究所研究員)、1986年在イラク大使館公使、1989年在カナダ大使館公使を歴任。1991年から1993年まで総合研究開発機構へ出向。駐ウズベキスタン大使、国際情報局長、駐イラン大使を歴任。国際情報局長時代は各国情報機関と積極的に交流。2002年より防衛大学校教授。この間公共政策学科長、人文社会学群長を歴任。2009年3月退官。

Twitter:@magosaki_ukeru

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