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荻原博子「家庭のお金のホントとウソ」

北朝鮮、拉致交渉で日本に巨額要求か…トランプを「勘違い」させた金正恩の外交テクニック

文=荻原博子/経済ジャーナリスト

 日本は会談で拉致問題を提起してもらうために、トランプ政権に協力してきました。ただ、トランプから取るものだけを取って肝心の非核化を骨抜きにしてしまった金正恩が、トランプが言及したからといって拉致被害者をすんなり返してくれるとは考えにくいのが現実です。

 日本にとって、考えられるシナリオは2つあります。ひとつは、「拉致問題は解決済み」と突っぱねられてしまうこと。日本政府は、トランプが拉致問題について言及した際に金正恩が「『それは解決済みの話』とは言わなかった」と、いかにも希望がありそうな雰囲気で伝えています。

 しかし、常識的に考えても、自国の安全保障を要求する交渉のなかで、北朝鮮が「解決済み」などとトランプの心象を悪くするかもしれない話をするわけはないでしょう。それを言うとすれば、日本と直接対峙したときではないでしょうか。

 2つ目は、お金で解決するという可能性です。北朝鮮は体面としては「解決済み」のほうがいいのかもしれませんが、お金がないという事情もあり、現実的にはこうした方向に流れていく可能性もあります。

 問題は、金正恩が「トランプを相手に対等に話ができる、世界でも数少ない存在」として、すでに国際社会で一目置かれてしまったことです。日本では北朝鮮は特異な国として扱われていますが、世界的に見ると、北朝鮮は160カ国以上と国交を持っています。アメリカとの間には国交はありませんが、今回の会談で「アメリカと対等の関係にある」と認められたことは、北朝鮮にとっては大きな国益といえます。

 残念ながら、日本はアメリカと仲良くしているとはいえ、いざとなったら平気で高い関税をかけられてしまうような上下関係があります。そうなれば、北朝鮮が「頭(アメリカ)の言うことなら、尻尾(日本)はなんでも聞く」とばかりに、日本を一段低く見る可能性もあるでしょう。

 さらに、仮に朝鮮半島の非核化が実現して在韓米軍が撤退すれば、その穴埋めに日本が軍備を増強しなくてはならない事態になるかもしれません。なんでもかんでもいち早くトランプ支持を打ち出す日本ですが、果たしてこの米朝首脳会談では、どれだけのメリットがあったのでしょうか。中国、ロシア、韓国、アメリカを操ってみせた北朝鮮に、国内で不祥事が頻発している日本はしっかりと対峙していけるのでしょうか。

 ちなみに、ビジネスパーソンは相手と交渉する前に周到な下準備をすることが大切です。準備不足だったトランプは、ビジネスパーソンとしては三流だと思います。
(文=荻原博子/経済ジャーナリスト)

荻原博子/経済ジャーナリスト

荻原博子/経済ジャーナリスト

大学卒業後、経済事務所勤務を経て独立。家計経済のパイオニアとして、経済の仕組みを生活に根ざして平易に解説して活躍中。著書多数。

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