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【大阪北部地震】活断層密集地帯での内陸直下型地震に要警戒…南海トラフ対策に過度な集中

文=木股文昭/元名古屋大学地震火山研究センター教授、東濃地震科学研究所副主席主任研究員
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【大阪北部地震】活断層密集地帯での内陸直下型地震に要警戒…南海トラフ対策に過度な集中の画像1地震の影響で長蛇の列のJR大阪駅前バスターミナル(写真:坂本照/アフロ)

内陸直下型地震も侮れない

 18日朝、ちょうど通勤通学時間帯に大阪府北部を震源とする地震(地震の規模:マグニチュード<M>6.1)が、近畿地方をはじめとする広い範囲を襲った。大阪市北区、高槻・茨木・箕面・枚方市で震度6弱の揺れになったが、家屋の全壊はなかったもよう。だが、高槻・大阪・茨木市で女児1名、高齢者4名の災害弱者がブロック塀や家具の下敷きになり死亡した。

 この地域では、1995年1月に犠牲者6000余名に上った阪神・淡路大震災の震源となった活断層の六甲・淡路島断層帯が東北東に延びるかたちで有馬・高槻断層帯が存在する。今回の地震は、その有馬・高槻断層帯の一部での断層運動により生じたと考えられる。

 日本列島、とりわけ中部地方から近畿、中国、四国、九州地方の内陸には数多くの活断層が存在する。まさに活断層の密集域に数多くの人々が暮らす。活断層はこれまでに大きな規模の地震を発生させた履歴を持つ。それだけに活断層は必ず動き、地震が襲うと考えるべきだ。朝日新聞では「足元の活断層」として、列島の活断層を地図つきで簡潔に紹介している

 2年前、熊本地方を襲った地震も布田川・日奈久断層帯の活動である。政府は同断層帯で有史以降に大きな地震が発生しておらず、「地震発生に注意」としていた。しかし、地元の人々の7割が足下に活断層が存在することを知らなかった(地震後の熊本県調査)。

 阪神・淡路大震災以降、活断層の存在が注目され、多くの活断層で断層を掘り下げ、過去の活動履歴が調査された。しかし、海溝で発生する地震と比較し、活断層での地震発生頻度は極めて低く、1000年から数千年間隔となるだけに、活動履歴の多い活断層で1万年に6回、2~3回という活断層が多く、古文書が残っているわけもなく、地層から年代推定するために、前回起きた時期についても大きな誤差を伴う。

 確かなことは、活断層は必ず動く。そして、地震が古文書に記録として残っていれば、この1000年ぐらいは動かないだろうといえるが、残っていなければ、明日起きても不思議でない。残念だが、現在は活断層もこの程度しか解明されていない。

 政府は南海トラフで発生する巨大地震で、東京から西日本の太平洋沿岸を中心に甚大な被害が生じるとして、1970年代後半に「明日起きても不思議でない」といわれた「東海地震」以降、地震災害対策を南海トラフでの海溝型巨大地震に集中して行ってきた。しかし、規模は小さいものの、内陸直下型地震は各地で頻発し、少なからずの犠牲者が出ていることを忘れてはいけない。内陸直下型地震にもきちんとした対策を講じるべきである。

 確かに、海溝型巨大地震では最近も、明治三陸地震津波や関東大震災、昭和三陸地震津浪で死者が万を超す甚大な被害を被っている(図1)。しかし、歴史を振り返ると、内陸直下型地震でも1891年濃尾震災や1995年阪神・淡路大震災ではそれぞれ6000人以上の死者が出ている。幕末の安政東海・南海地震や太平洋戦争末期の東南海・南海地震の前後には、内陸でも活断層が動き、いくつかの内陸直下型地震が発生している。そして、これら内陸直下型地震による犠牲者は海溝型巨大地震に匹敵する。

【大阪北部地震】活断層密集地帯での内陸直下型地震に要警戒…南海トラフ対策に過度な集中の画像2図1 江戸時代末期からの日本における主な震災 海溝型地震を青色、内陸直下型地震を茶色で示す(宇津徳治と気象庁のデータを元に木股が整理)

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