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江川紹子の「事件ウオッチ」第107回

【オウム真理教・7人同時死刑執行】賛否両論巻き起こる死刑制度について江川紹子の提言

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 死刑廃止を求める団体に加え、識者からも死刑廃止は世界的な潮流であるとの指摘がある。確かにそれは事実である。韓国も、年内には死刑廃止宣言をするとの報道がなされている。各国が次々に廃止しているものを、なぜ日本は維持しているのかという問いは、一人ひとりが制度を考えるうえで意味深いと思う。

 私自身が、死刑存置はやむなしと考えるのは、オウム事件の存在が大きい。麻原のように、多くの人の命を奪っただけでなく、自分を信じてついてきた弟子たちを殺人者にし、事態が発覚しても、事実と向き合わず、罪を弟子に押し付け、あとは狂人を装って責任を逃れようとし、なんら真相解明にも協力せず、被害者に対する謝罪も慰藉の措置も講じない……という者に対して、自由刑で済むとはとても思えないからだ。

 ヨーロッパなど海外の先進諸国で死刑廃止が主流だからという主張は、おそらく国内では説得力を持たない。テロ事件について、ヨーロッパでは現場で射殺することを厭わないが、日本では生きて裁判にかける努力をしている違いもあって、必ずしも日本は犯罪者の人命を軽く扱っているわけでもない。

 ドイツでは、列車の中で刃物を振り回して乗客にけがをさせた難民の少年を警察官が射殺した。日本では、新幹線で起きた同種事案を、車掌が説得し、警察官が制圧して逮捕した。オウムに対する強制捜査は、どれだけの化学兵器を教団が保有しているかわからない状態で始まったが、警察は一発の銃弾も発射することなく捜査を遂げ、暴漢に教団幹部を1人殺害されるという失態を除いて、被疑者全員を逮捕した。

 とはいえ、国家が生命を奪う死刑は究極の刑罰であって、今のままでいいのか、という議論は、やはり必要だと思う。麻原に死刑は妥当であっても、弟子たち12人が死刑判決というのは、やはり多すぎたのではないだろうか。それを考えると、死刑の基準がこれでいいのか、議論する余地はあると思う。

 死刑の問題となると、死刑の廃止の立場からの意見が活発に出され、存廃の議論ばかりになりがちだ。そうではなく、死刑存置の立場から、死刑の基準、死刑囚の待遇、執行のあり方など、多岐にわたる議論をし、国民の多くが納得できるような制度に改善していくことが必要だと思う。
(文=江川紹子/ジャーナリスト)

●江川紹子(えがわ・しょうこ)
東京都出身。神奈川新聞社会部記者を経て、フリーランスに。著書に『魂の虜囚 オウム事件はなぜ起きたか』『人を助ける仕事』『勇気ってなんだろう』ほか。『「歴史認識」とは何か - 対立の構図を超えて』(著者・大沼保昭)では聞き手を務めている。クラシック音楽への造詣も深い。
江川紹子ジャーナル www.egawashoko.com、twitter:amneris84、Facebook:shokoeg

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