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森ビル、金が金を生み出す 「緑の錬金術」…巨大ビル内に「巨大な緑の空地」の理由

文=小川裕夫/フリーランスライター
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森ビル、金が金を生み出す 「緑の錬金術」…巨大ビル内に「巨大な緑の空地」の理由の画像1六本木ヒルズ・森タワー(「Wikipedia」より/0607crp)

 戦後日本でかたくなに信じられていた不動産神話が揺らいでいる。

 元総務大臣の増田寛也氏が座長を務める「所有者不明土地問題研究会」は、全国で所有者不明の土地の総面積が約420万ヘクタールにも及ぶと発表。その面積は九州の面積を上回るため、関係者に大きな衝撃を与えた。人口減少社会に突入した現在、地方都市の衰退は待ったなしともいわれる。政府や地方自治体関係者は、一様に対策に頭を悩ませている。

 一方、土地を所有している側も悩みを抱える。マンションを建てるなどして活用できるような不動産は、もはや都心部のごく一部。東京23区内でも空き家は増加しており、不動産を買い取ってくれる業者はいない。土地を所有していても活用できず、売却もできない。つまり、土地は固定資産税や都市計画税を払うだけの負債でしかない。そのため、最近では不動産は“負動産”などとも揶揄される。

 これまで人口増が続き、東京五輪を目前に控えて都市開発が活発化している東京は、不動産市況も活況。だから、負動産は地方都市の問題と認識されてきた。しかし、不動産の“負動産”化は急速に進展し、山手線の内側にまで及び始めている。

 閑静な住宅街を抱える文京区でも、昔ながらの家屋密集地帯が残る。現行の建築基準法では接道義務と呼ばれる規制があり、家を建てられる土地は必ず公道に2メートル以上接していなければならない。建築基準法における公道とは、幅員4メートル以上の道路とされている。つまり、土地所有者の力だけでは接道義務を果たせない土地もある。そんな接道義務を果たしていない土地には、家屋を建てることができないので、不動産業者も土地を買い取ってくれない。そうした事情が東京でも“負動産”を生み出している。不要な土地があちこちに放置される実態は加速しており、政府も土地の所有権を手放せる制度の検討を始めた。

公開空地の徹底的活用

 官の動きとは別に、民間でも不動産価格の下落を阻止する動きが顕著になっている。その切り札として、都市開発事業者から注目されているのが公開空地の徹底的活用だ。公開空地とは、民間のビルや商業施設、マンションなどに設けられるオープンスペースのこと。

 公開空地は1970年に制度化されたもので、決して新しいものではない。同年に総合設計制度が生まれた背景は、高度経済成長期に東京や大阪といった大都市に高層ビルを集積させるためだった。高層ビルが集積すると圧迫感が強まり、住環境の悪化を招く。そうした心理的な負の部分を取り除くため、政府が動いた格好だ。

 公開空地を確保した建物には、容積率や高さ制限を緩和するボーナスが付けられる。そのボーナスを呼び水に、政府は民間事業者たちに公開空地を設けることを推奨した。政府の意向を受け、都市開発事業者は公開空地をつくって、それで得た容積率のボーナスでビルを高層化していった。

 しかし、当初の公開空地は必ずしも政府が意図したように作用しなかった。公開空地は、原則的に誰もが自由に立ち入ることができるオープンスペースとされる。民間が設置する公園のような公共スペースでもある。しかし、行政が設置・管理する公園ではないので、あくまでも土地の管理者が管理規約を定める。そのため、公開空地を設置して容積率のボーナスを得ながらも、肝心の公開空地には「関係者以外立ち入り禁止」「敷地内での飲食禁止」などの看板が立てられるなど、「およそ公開空地とは言い難いような、“なんちゃって公開空地”があちこちで誕生した」(国土交通省職員)。

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