順調だった某企業がたった3年間で売上半減→資金ショート危機に陥った理由
業績悪化はパワーコンディショナ(電力調整装置)事業の失敗に尽きる。パワーコンディショナは、直流電力を家庭でも使えるように交流変換する電力調整装置。太陽電池市場の拡大から一時期は田淵電機の業績拡大を支え、需要増に対応して田淵電機はタイやベトナムでの増産投資を行ってきた。それが太陽電池市場の反転から一気に需要が失速、投資負担も逆に重荷となってしまった。
さらに前期の18年3月期には、国内太陽光発電市場での改正FIT法における認証手続きの想定外の遅れやパワーコンディショナ販売価格の下落も重なり、経営悪化に拍車がかかり、ついに自力での経営立て直しは断念する事態となったのである。
今後の経営立て直しの可能性を探る
事業再生ADRについて金融負担は棚上げが認められることになるだろう。まず、これは田淵電機経営再建の大前提になる。しかし赤字経営が続いている限り、資金はいずれ再びショートする。V字回復が果たせれば問題ないが、それでも当面の運転資金は必要になる。
当面の運転資金として、田淵電機は主要取引金融機関を対象に新たな資金調達(DIPファイナンス)を行うことになるだろう。この新たな借り入れについては、既存の借入金とは別に優先弁済権を付与することになる。それがないと金融機関も応じにくいだろう。ここまでは経営再建の前提条件となる。当然クリアしたうえで、この後どうなるか? ということである。
パワコンの急回復を望むというのは少し乱暴だろう。経営再建への道として考えうるのは、今のところ2つである。
ひとつは家庭用ゲーム機器向けのアミューズメント用電源機器(アダプタ)。これはすでに新規受注として立ち上がっており、会社側でも「順調に立ち上がって拡大している」と説明している。前期まではパワコンの不振のなかで「焼け石に水」だったが、この拡大が続けば、回復の原動力となる。
もうひとつは筆頭株主であるTDKの出方である。TDKは今のところ沈黙を守っているが、なんといっても田淵電機の発行済み株式の2割弱を握る筆頭株主である。製品の共同開発、あるいはもう少し踏み込んだ経営支援的な製品投入などもあるかもしれない。
いずれにしても、新製品の動きについても少しずつ出てきている。それは前述金融機関からの支援を得るためにも必要な条件となりそう。しかし実際の効果がどこまで出るかはまだまだ不透明である。
(文=高橋潤一郎/クリアリーフ総研代表取締役)