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片田珠美「精神科女医のたわごと」

【富田林署・逃走】大阪府警、不祥事続出の内部実態…被害届取り下げ強制、交通違反もみ消し

文=片田珠美/精神科医
【富田林署・逃走】大阪府警、不祥事続出の内部実態…被害届取り下げ強制、交通違反もみ消しの画像1大阪府警察(「Wikipedia」より/Kansai explorer)

 大阪の富田林警察署で拘留中の男が逃走して騒動になっているが、驚いている人は私の周囲にはあまりいない。むしろ、「いかにも大阪府警らしい」と言う人がほとんどで、私も大阪府民の1人として同感だ。その背景に潜んでいる大阪府警の構造的な問題を指摘したい。

身内に甘い

 若い頃、警察病院に勤務していたことがあり、当時は高校野球の季節になると警官OBの事務職員数人が胴元になって野球賭博をやっていた。私は声をかけていただけなかったが、若手の男性医師の多くは「先生も賭けませんか」と誘われていたようだ。

 外で野球賭博をやるとヤバイことになるのだろうが、賭博を取り締まるはずの警察と関連する組織では堂々と行われていたので、「身内には甘いんだな」という印象を抱いた記憶がある。

 また、ある内科医が、深夜に患者の容体が急変して呼び出され、猛スピードで車を運転して病院に駆けつけていた途中でスピード違反の取り締まりに引っかかった。そして、青切符が切られ、反則金を支払わなければならなくなった。

 すると、どこで聞きつけたのか、警察病院の課長の1人が「取り消しにできますよ」と耳元でささやいた。その課長は警官OBで、警察にいた頃は交通違反の取り締まりをしていたらしい。だから、情報の入手も、違反の取り消しも簡単にできたのだろうが、内科医は弱みを握られるのが嫌で、断ったという。

 警察病院の医師のスピード違反を取り消しにできるくらいだから、警官のちょっとした違反など簡単にもみ消せるのではないかと背筋が寒くなった。もちろん、これは30年近く前の話で、その後大阪府警は激しい批判に応えるために組織を改革してきたと思いたい。それでも、たびたび不祥事の隠蔽が発覚するので、身内に甘いという印象を払拭できない。

面倒なことは嫌

 精神科病院に勤務していた頃、留置場に鑑定に行くと、「できるだけ早く迎えに来て、連れて帰ってくれ」と言われたものだ。留置場には、路上で暴れたり、意味不明のことを口走ったりしていた人が、通報によって保護・収容されていることもあり、要請を受けて精神科医が鑑定に出向く。そして、何らかの精神障害を認めれば、精神科に入院させるのだが、その際、警官から言われたのである。

「法律が厳しくなって、精神科病院から迎えに行って入院させることはできなくなったんですよ。病院まで連れて来てください」とお願いすると、「面倒くさいなあ。大和川病院は良かった。いつでも、どんな患者でも、病院の車で迎えに来て、入院させてくれた」という答えが返ってきた。

 たしかに、大和川病院は関西一円の警察を回り、テレホンカードを配ったり、盆暮れに付け届けをしたりする「営業活動」で有名だった。「いつでも、どんな患者でも受け入れます。病院の車でお迎えに上がります」というのがセールスポイントで、警察にとっては「便利な病院」だったのかもしれない。

片田珠美/精神科医

片田珠美/精神科医

広島県生まれ。精神科医。大阪大学医学部卒業。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。人間・環境学博士(京都大学)。フランス政府給費留学生としてパリ第8大学精神分析学部でラカン派の精神分析を学ぶ。DEA(専門研究課程修了証書)取得。パリ第8大学博士課程中退。京都大学非常勤講師(2003年度~2016年度)。精神科医として臨床に携わり、臨床経験にもとづいて、犯罪心理や心の病の構造を分析。社会問題にも目を向け、社会の根底に潜む構造的な問題を精神分析学的視点から分析。

Twitter:@tamamineko

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