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片田珠美「精神科女医のたわごと」

富田林署から逃走中の樋田容疑者、反社会性パーソナリティ障害の可能性…情性欠如者の恐ろしさ

文=片田珠美/精神科医
富田林署から逃走中の樋田容疑者、反社会性パーソナリティ障害の可能性…情性欠如者の恐ろしさの画像1樋田淳也容疑者(大阪府警察のHPより)

 大阪府警富田林署で拘留されていた樋田淳也容疑者が逃走し、いまだに身柄が確保されていない。逃走後、松原市にある樋田容疑者の実家付近で黒のミニバイクが盗まれており、そのミニバイクを使ったとみられるひったくりが隣の羽曳野市で発生した。その後も、大阪市で同様のひったくり事件が続発している。いずれも、ミニバイクに乗って若い女性を狙う手口であり、樋田容疑者の犯行ではないかと疑いがかけられている。

 こうした疑いがかけられるのは、樋田容疑者が今年5月に逮捕される直前、7件連続でひったくり事件を起こした疑いが強いからである。樋田容疑者は原付きバイクで女性の後方からカバンをひったくったとして、窃盗や強盗致傷などの罪で逮捕・起訴されたのだ。

 一連のひったくり事件に樋田容疑者が関与しているとすれば、反社会性パーソナリティ障害の可能性が高い。反社会性パーソナリティ障害の人は、規範意識が低く、逮捕の原因になる行為を繰り返すからである。

 また、樋田容疑者は女性を暴行したとして、強制性交の罪でも逮捕・起訴されているが、これは性衝動をコントロールできないからだろう。衝動コントロールができないからこそ、性欲を満たすためなら法を犯すことでも平気でする。ひったくりは金銭欲を満たすためだろうが、このように自らの欲望を満たすために反社会的行為を繰り返すのも、反社会性パーソナリティ障害の特徴だ。

 さらに、逃走前に面会していた弁護士に「面会が終わったことは署員に自分が伝えるので、そのまま帰ってほしい」という趣旨の話をしたようだが、これは1人になる時間をつくって逃走するために計画的についた嘘だろう。このように平気で嘘をつくことも、反社会性パーソナリティ障害の人にはしばしば認められる。

「情性欠如者」の可能性

 
 何よりも私が危惧するのは、大阪府警の捜査幹部が「ひったくりだけで30件以上やったとみている。強姦とかで懲役をくらって、出所後1カ月ぐらいでやってるから、更生しようなんて考えはないよ」と話したように(関西テレビ)、罪悪感も良心の呵責も樋田容疑者にはなさそうなことだ。

 こういう人を、ドイツの精神科医、クルト・シュナイダーは「情性欠如者」と呼んでいる。「情性」とは、同情心、羞恥心、反省、悔悟、名誉感情、良心などの高等な人間的感情であり、これが欠如しているのが「情性欠如者」である。「情性欠如者」は、被害者に同情しない。反省も後悔もしない。そのため、冷酷で残忍であり、殺人、放火、強盗、強姦などの凶悪犯罪に走りやすい。

 これまでの経緯からみて、樋田容疑者は「情性欠如者」である可能性が高い。しかも、顔写真が公開され、加重逃走容疑で全国に指名手配されている。このような追い詰められた状況に置かれると、「情性欠如者」は自らの反社会的行為を一層正当化する。切羽詰まって自暴自棄になる恐れもある。一刻も早い逮捕を切に望む。
(文=片田珠美/精神科医)

片田珠美/精神科医

片田珠美/精神科医

広島県生まれ。精神科医。大阪大学医学部卒業。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。人間・環境学博士(京都大学)。フランス政府給費留学生としてパリ第8大学精神分析学部でラカン派の精神分析を学ぶ。DEA(専門研究課程修了証書)取得。パリ第8大学博士課程中退。京都大学非常勤講師(2003年度~2016年度)。精神科医として臨床に携わり、臨床経験にもとづいて、犯罪心理や心の病の構造を分析。社会問題にも目を向け、社会の根底に潜む構造的な問題を精神分析学的視点から分析。

Twitter:@tamamineko

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