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木村貴「経済で読み解く日本史」

地球、寒冷化の脅威…近づく氷期突入、人類にとって最大の災害

文=木村貴/経済ジャーナリスト
地球、寒冷化の脅威…近づく氷期突入、人類にとって最大の災害の画像1「Gettyimages」より

 東京国立博物館(上野公園)で開催中の展覧会「縄文――1万年の美の鼓動」(NHK、朝日新聞社など主催)が人気を集めている。火焔型土器や土偶「縄文のビーナス」など教科書でもおなじみの国宝をはじめとする多数の出土品が展示され、夏休みシーズンということもあってカップルや家族連れでにぎわっている。

 縄文時代の土器や石器、土偶や装身具は力強さと神秘的な魅力にあふれる。とくに中期の土器の躍動感あふれるダイナミックな造形は、世界の歴史の中で見てもきわめて独創的なものといわれる。

 近年注目を浴びる、この魅力的な縄文文化をもたらしたものは、なんだったのだろう。展覧会の図録に記された主催者あいさつにはこうある。

「今から約1万3000年前、氷期が終わりに近づいて温暖化が進み、現在の日本列島の景観が整いました。そして、その自然環境に適応した人々の営みが始まります。縄文時代の幕開けです」

 ここに書かれたとおり、縄文時代が始まるきっかけは地球の温暖化だった。縄文時代とは旧石器時代が終わったおよそ1万3000年前から、約1万年続いた時代を指す。氷期が終わりを迎えた日本列島は、温暖で湿潤な安定した気候に変わり、現在と同じ山や森、川や海といった景観や四季が整う。海面は現在より2~7メートル高かったと推定され、そのため海岸線は内陸の奥深く入り込んでいた。海面が上昇してできた浅い海は、魚や貝が生息する絶好の場所となった。

 四季折々の豊かな山と海の幸は、人々の生活を大きく変えた。季節に合わせた植物採集・漁撈・狩猟が可能となったばかりでなく、豊富な食料を、収穫の減る冬や真夏に備えて保存加工や貯蔵ができるまでになった。こうした食料事情の変化により、人々は食料を求めて住みかを変えなくてもすむようになり、定住生活が可能になる。

 定住することによって、それ以前は持ち歩けなかった重い土器や石皿などが所持できるようになり、多種多様な道具が生活を支えた。とくに土器は縄文人の食生活上、大きな意味のある道具だった。さまざまな食料を土器で煮れば殺菌されるし、柔らかくなるので栄養の吸収も良くなる効果があったからである。

 一方、土器は単なる煮炊きの道具ではなかった。縄文土器は出現した当初から、目を見張るような繊細かつ丁寧な模様で飾られる。材料となった粘土は思いどおりに形を仕上げることができるため、当時の人々は想像力を余すことなく発揮した。

木村 貴/経済ジャーナリスト

木村 貴/経済ジャーナリスト

経済ジャーナリスト。1964年熊本生まれ、一橋大学法学部卒業。大手新聞社で証券・金融・国際経済の記者として活躍。欧州で支局長を経験。勤務のかたわら、欧米の自由主義的な経済学を学ぶ。現在は記者職を離れ、経済を中心テーマに個人で著作活動を行う。

Twitter:@libertypressjp

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