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低迷する『西郷どん』、「禁じ手」使いテコ入れ…強引な西田敏行投入で「無理やり感」漂う

文=吉川織部/ドラマウォッチャー
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 鈴木亮平が主演を務めるNHK大河ドラマ『西郷どん』の第39回「父、西郷隆盛」が21日に放送され、平均視聴率は前回から2.1ポイント増の12.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だった。

 前回で戊辰戦争は集結し、この第39回から物語は「明治編」へと移った。アバンタイトルは、明治37年の京都市。京都市長に就任した西郷菊次郎(西田敏行)が役所に出勤する初日の様子から始まった。初回からずっとナレーターを務めてきた西田が演者として出演することは、前回流れた予告映像でネタバレしていたし、西郷隆盛(鈴木)の長男役であることも芸能ニュースなどで事前に報道されていたため、驚いた人は少なかっただろう。

 とはいえ、西田の貫禄はやはりすごい。出迎えた人々にちょっとあいさつし、その後は市長の椅子に座って会話をするだけのシーンなのに、菊次郎が相当な大物であることが伝わる。島津斉彬役の渡辺謙が退場して以来、長らく忘れていた「その人が存在するだけで画面が締まる感覚」を思い出した。なんでもかんでもベテランを使えばいいとは思わないが、出演しただけでドラマの雰囲気をがらりと変える存在感は、やはりベテランにしか出せないものなのだろう。

 さて、京都市長に赴任した菊次郎は、助役から「お父上のことを教えてほしい」と懇願され、知らないことのほうが多いと前置きしつつも、これを快諾。「私が話せるのは、明治2年の頃から」と回想を始めた。おそらくここから最終回までは、菊次郎の視点から西郷隆盛を語るという体裁で物語が進むのだろう。

 オープニングの映像も今回から一部変わり、隆盛と大久保利通(瑛太)が高千穂峰ですれ違うシーンが挿入された。2人の行く末を表現するような映像は美しくも悲しく、「明治編、なんだかおもしろくなるかも」との期待が高まる。実際に、視聴者からの評判もかなり良い。

 本編では、隆盛が奄美大島から鹿児島へと菊次郎を引き取り、西郷家の長男として育てるいきさつを描く一方、急激な改革を進める明治政府のやり方に各地で反発が起き、首脳たちが右往左往する姿を描いた。

 子供時代の菊次郎を演じる子役の城桧吏は、目がぱっちりしていて母親・愛加那役の二階堂ふみによく似ており、泣き言を言わず西郷家に溶け込もうと努める聡明な感じがとても良い。素晴らしいキャスティングだと思う。一段と体が大きくなり、短髪になった鈴木亮平も、我々がイメージする隆盛そのものだ。隆盛が鹿児島で穏やかな日々を過ごしていた頃、東京では明治政府が機能不全に陥り、混迷を深めていた――という対比を用いた構成も良かった。総じて、「明治編」は期待できそうなスタートを切ったといえよう。

 ただ、「語り手が実は西郷隆盛の息子でした」という仕掛けについては、少々ひっかかるところがあるのも事実。当初の構想では西田はあくまでもナレーターであり、菊次郎役で出演する予定ではなかった。このため、初回からずっと「西田による語りは菊次郎の回想だった」と仮定すると、菊次郎は自身が見てもいないことを語り、父に向って「西郷どん、気張れ!」と声を掛けていたことになる。これはあまりにも不自然だ。とすると、第38回までのナレーションはあくまでも西田敏行本人で、第39回からの語りは“西田敏行が演じる菊次郎”に代わった、と解釈するほうが正しいのだろう。いかにも後出し感満載であり、失速気味の視聴率にテコ入れするために西田を担ぎ出すという「禁じ手」を使ってしまったことは否定できない。

 とはいえ、後出しだろうがなんだろうが、ドラマは視聴者に見てもらえなければ意味がないし、おもしろければ勝ちである。西田敏行と鈴木亮平の“新旧”西郷コンビで、最終章を盛り上げてほしい。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)

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