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小林敦志「自動車大激変!」

「ジムニー」バカ売れのスズキが軽自動車販売1位にこだわらざるを得ない裏事情

文=小林敦志/フリー編集記者
「ジムニー」バカ売れのスズキが軽自動車販売1位にこだわらざるを得ない裏事情の画像1スズキの「ジムニー」(「ジムニー | スズキ」より)

 本連載前回記事で、軽自動車業界で注目される“SD戦争”についてお伝えした。これは、スズキとダイハツ工業のブランド別販売台数トップをめぐる販売競争のことだ。競争を激化させた要因として、スズキの新型「スペーシア」の好調な販売があり、さらにスズキとダイハツの両社にとっても本田技研工業(ホンダ)の「N-BOX」は脅威に映っている。

 また、最近では、日産自動車「ノート」などのコンパクトカーあたりでも販売ランキングのトップ争いが注目されているが、なぜ、特に軽自動車は“販売ナンバー1”にこだわるのだろうか。

 軽自動車は排気量やボディサイズなどの規格が厳格化されており、走行性能などクルマとしての基本性能でライバルメーカーと決定的な差をつけることが難しい。そのため、見た目のデザインやボディカラーの種類、車内の使い勝手の良さなどで差をつけるしか、ライバルに対抗する手段はないといっていい。また、購入する側も個別銘柄に強い思い入れを持つ人は少ない。

 未使用中古車専門店には多くのメーカーの軽自動車が展示されているが、品定めの風景を見ていると、消費者は「そのクルマのボディカラーいいねぇ」とか「こっちのほうがかわいいわ」といった会話をしている。つまり、そこでの会話にはメーカー名や車名が出ることがなく、メーカーや車名へのこだわりなく選んでいることが多いのである。

 そのような環境で販売していくには、「ウチは軽自動車販売ナンバー1ブランドです」「このクルマは軽自動車で一番売れています」といったセールストークがかなり効果的だ。そのため、スズキやダイハツはブランド別、N-BOXは通称名別での販売ナンバー1に強いこだわりを見せているのである。

 ただ、N-BOXはライバルとの差別化が難しい軽自動車のなかであっても、センタータンクレイアウトなどのホンダらしいこだわりが目立つ部分が、断トツで売れる一因といえよう。

 スズキは一時、小型車販売を強化した時期があり、もちろんそのときも軽自動車販売の手を抜いていたわけではないが、えげつない“自社届け出”などは手控える動きを見せていた。自社届け出とは、ディーラーなどにある未使用状態で未届け(ナンバープレートのついていない)在庫車をディーラー名義などで届け出を行うことで、もはや常態化している“販売台数の上乗せ”だ。

 ただ、スズキは最近、再び軽自動車販売トップを強く意識している。それも、やはり「軽自動車販売ナンバー1ブランド」の肩書があるかないかで販売現場での売りやすさがまったく異なるからであり、そうした事情を物語る動きといえる。

スズキ、軽トップに返り咲きか?

 再び、“SD戦争”に目を移そう。現状の販売台数差を見ると、2018年の暦年締めでスズキがトップのダイハツを抜き去るのは厳しそうだが、18年後半からの盛り返しを見ると、事業年度(17年4月から18年3月)では、すでに18事業年度締め上半期でスズキがダイハツを抜き去りトップとなっていることからも、年間販売でもダイハツを抜き去る可能性が十分にあるといえる。

 その要因となるのが、新型「ジムニー」の登場だ。過去、14年にスズキがトップに返り咲いたときには、「ハスラー」が大ヒットした。通称名別販売ランキングトップクラス常連モデルは、自社届け出などでの上積みをお互いに行っているので、差が開くことは少なく、“僅差での闘い”が日々展開されている。そんななか、ハスラーのような異例のヒットモデルが登場すると、その分がポンとブランド全体の販売台数に上乗せされることになるので、販売競争が一変してしまう。それが、今の軽自動車業界なのである。

 ただ、ジムニーは「納車まで1年」などという話もあるので販売台数への貢献は限定的となるが、話題性は十分なので、スズキ系ディーラーへの集客効果は十分だ。今は「行くのが面倒くさい」といった、消費者の“新車ディーラー離れ”が加速している。そのなかで、ジムニーという存在が店頭へお客を呼び込めば、ジムニー以外のスズキの軽自動車の販売促進にもつながりやすくなる。そのため、今のスズキは“勢いがある”といえるのである。

 逆にダイハツは、「タント」が次期型で新規プラットフォームを採用することなどもあり、モデルチェンジまでにまだ時間がかかり、今やヒット車となった「ムーヴ キャンバス」や今年デビューした「ミラ トコット」といった魅力的なモデルはあるが、ジムニーほどの集客効果はないのが実情だ。

 このような販売現場の勢いの差もあるので、18年度締めでは久々にスズキが軽自動車トップブランドとなる可能性は十分にある。今後も、軽自動車の販売競争からは目が離せない状況が続くだろう。
(文=小林敦志/フリー編集記者)

小林敦志/フリー編集記者

小林敦志/フリー編集記者

1967年北海道生まれ。新車ディーラーのセールスマンを社会人スタートとし、その後新車購入情報誌編集長などを経て2011年よりフリーとなる。

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