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篠崎靖男「世界を渡り歩いた指揮者の目」

オーケストラのプロの指揮者になる方法は、指揮者自身もよくわからない?

文=篠崎靖男/指揮者
オーケストラのプロの指揮者になる方法は、指揮者自身もよくわからない?の画像1「Getty Images」より

「どうやって指揮者になったのですか?」

 こう聞かれると、「また、この質問か」と思います。うんざりするということではなく、少し困ってしまう質問なのです。

 僕のケースとしては、子供の時にピアノを習っていたけれど、たいしてまじめに取り組んではいませんでした。しかし、なぜかオーケストラを聴くと興奮していました。中学生くらいから急に指揮者になりたくなり、高校に入ってから必死で勉強して、音楽大学に入って、卒業後にコンクールで受賞したことがきっかけで、英ロンドンのマネージメントに所属し、同時に日本の音楽事務所にもお世話になり始めて、米ロサンゼルス、フィンランド、日本のオーケストラのポジションを経験しながら、いろいろな国々のオーケストラを指揮してきました。

 このように経緯は言えるけれども、「じゃあ、それが指揮者になるための道筋か?」と簡単に納得されても困るわけです。オーケストラの楽員やソリスト、歌手の人生も単純ではないとは思いますが、彼らと指揮者で絶対的に違うのは、自分で音を出せないということです。楽器奏者や歌手は自分で演奏して実力をアピールできますが、指揮者はオーケストラを指揮しない限りは実力を証明できません。

「じゃあ、オーケストラを指揮すればいいじゃないか」と、簡単に仰られるかもしれません。しかし、オーケストラを指揮するというのは、数日間のリハーサル、そして大事なコンサートのすべてを任されるということですので、オーケストラとしては、しっかりと信用できる指揮者に依頼します。しかしながら、オーケストラを指揮したことのない“指揮者の卵”には、そもそも信頼自体がありませんので、指揮をさせてもらえません。そんなどうしようもない状況から、すべての指揮者はスタートします。しかも、集客効果などと言われてしまえば、そもそも指揮者として世の中に出ていないわけですから、まったくお手上げとなります。

 コンクールで賞を取り、手っ取り早くチャンスをつかむことも、方法のひとつです。「受賞者」ということで話題性があるので、指揮をさせてくれるオーケストラも出てきます。これは本当にありがたいです。しかし、だからといって、一回指揮をする機会をもらうだけで、次の機会があるかどうかはわかりません。コンクールで賞を取っても、少し名前が広まるだけで、「指揮者になった」といえるほどではありません。幸運にも、少しずつ仕事が増えて行く中でガムシャラにがんばっていたら、いつの間にか“指揮者になっていた”というほうが的を射ていると思います。

篠﨑靖男/指揮者、桐朋学園大学音楽学部非常勤講師

篠﨑靖男/指揮者、桐朋学園大学音楽学部非常勤講師

 桐朋学園大学卒業。1993年ペドロッティ国際指揮者コンクール最高位。ウィーン国立音楽大学で研鑽を積み、2000年シベリウス国際指揮者コンクールで第2位を受賞し、ヘルシンキ・フィルを指揮してヨーロッパにデビュー。 2001年より2004年までロサンゼルス・フィルの副指揮者を務めた後ロンドンに本拠を移し、ロンドン・フィル、BBCフィル、フランクフルト放送響、ボーンマス響、フィンランド放送響、スウェーデン放送響、ドイツ・マグデブルク・フィル、南アフリカ共和国のKZNフィル、ヨハネスブルグ・フィル、ケープタウン・フィルなど、日本国内はもとより各国の主要オーケストラを指揮。2007年から2014年7月に勇退するまで7年半、フィンランド・キュミ・シンフォニエッタの芸術監督・首席指揮者としてオーケストラの目覚しい発展を支え、2014年9月から2018年3月まで静岡響のミュージック・アドバイザーと常任指揮者を務めるなど、国内外で活躍を続けている。現在、桐朋学園大学音楽学部非常勤講師(指揮専攻)として後進の指導に当たっている。エガミ・アートオフィス所属

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