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小谷寿美子「薬に殺されないために」

市販薬の胃薬、個人の判断で服用は危険…かえって治療の妨げ、副作用で苦しむ可能性も

文=小谷寿美子/薬剤師
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市販薬の胃薬、個人の判断で服用は危険…かえって治療の妨げ、副作用で苦しむ可能性もの画像1「Gettyimages」より

「これも胃薬なのに、さらに胃薬を飲んでもいいのですか?」という質問を受けます。これは、いい時とダメな時があります。その違いはどこにあるのでしょうか?

違いは胃の機能を理解しないとわからない

 
 胃の機能は大きく分けて3つあります。

(1)摂取した食物をとりあえず蓄える
(2)胃酸とタンパク質分解酵素を出す
(3)食べ物をドロドロの状態にしたのち十二指腸へ送る

 さらに(2)について詳しく説明していきます。胃に食べ物が入ると、胃の粘膜層から胃酸とタンパク質分解酵素が出ます。胃酸の働きは食べ物を殺菌することと、タンパク質分解酵素を活性化させることです。しかし、この酵素を活性化された状態で出してしまうと、すべてのタンパク質を無差別的に分解します。胃そのものもタンパク質でできているので、自身の胃も分解してしまいます。

 したがって、酵素はタンパク質を分解しない状態で出しておいて、胃酸と出会って初めてタンパク質を分解できる状態にしておきます。そして粘膜層から粘液を大量に出して胃壁と食べ物の間に大きな隔たりをつくっています。このおかげで自身の胃壁が酵素で溶かされるのを抑えつつ、食べ物のタンパク質をしっかり分解できるようになります。ポイントは胃酸、タンパク質分解酵素、粘液です。

 そして(3)についても説明しておきます。ここでポイントになるのが「蠕動運動」です。胃の筋肉は波打つように滑らかに動きます。この動きがあるおかげで、食べ物と酵素たちをしっかり混ぜることができます。そして、食べ物はドロドロの粥状になります。そして蠕動運動により十二指腸へ送られます。この動きが悪くなると、食べ物を混ぜてはくれませんし、次の十二指腸へ送ってもくれません。いつまでも食べ物が胃の中に滞留していることになります。

胃薬は3つに分けて考える

 胃の調子が悪いという時は胃の働きのどこかが悪くなっていると考えます。薬としては次の3つを考えていきます。

(1)蠕動運動を活発にさせる薬
(2)消化しやすくする薬(消化酵素)
(3)胃酸を抑える薬、粘液を増やす薬(守りの薬)

 多くの患者さんはこの3つを区別して考えないですし、薬剤師側としても時間の制約上、「胃薬」としか説明しないので(1)~(3)が別物であっても「胃薬」という認識になってしまいます。

小谷寿美子/薬剤師、NRサプリメントアドバイザー

小谷寿美子/薬剤師、NRサプリメントアドバイザー

薬剤師。NRサプリメントアドバイザー。薬局界のセカンドオピニオン。明治薬科大学を505人いる学生のなか5位で卒業。薬剤師国家試験を240点中224点という高得点で合格した。
市販薬も調剤も取り扱う、地域密着型の薬局チェーンに入社。社歴は10年以上。
入社1年目にして、市販薬販売コンクールで1位。管理薬剤師として配属された店舗では半年で売り上げを2倍に上げた実績がある。

市販薬、調剤のみならずサプリメントにも詳しい。薬やサプリメントの効かない飲み方、あぶない自己判断に日々、心を痛め、正しい薬の飲み方、飲み合わせを啓蒙中。

Twitter:@kotanisumiko

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