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ルノー=フランス政府、ゴーンが築いた“日産の利益収奪システム”の全貌

文=編集部
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ルノー=フランス政府、ゴーンが築いた“日産の利益収奪システム”の全貌の画像1カルロス・ゴーン前会長(写真:ロイター/アフロ)

 日産自動車と仏ルノー、三菱自動車の首脳が3月12日、横浜市の日産グローバル本社で共同記者会見を開き、3社連合を統括する新しい組織をつくると発表した。新組織は「アライアンス・オペレーティング・ボード」(連合運営会議)。ルノーのジャンドミニク・スナール会長が議長を務める。

 ルノーからはスナール氏とティエリー・ボロレCEO(最高経営責任者)の2人、日産は西川廣人社長兼CEO、三菱自は益子修会長兼CEOが中心メンバー。部品の購買、物流、研究開発、生産など協業の戦略を練る。「3社のCEOが直接、業務を統括する。私は会長でしかない」とスナール氏は言うが、新しい最高意思決定機関の主導権は、議長を出すルノーが握ったことになる。

 4人は並んで記者会見に臨み、3社連合の今後について説明した。

 日産・ルノー・三菱自の3社は会見に先立ち、アライアンス(提携)の新たなスタートに向けた9項目の覚書を締結。「ルノーの会長が日産の取締役会副議長(代表取締役)に適した候補であると想定される」と明記した。スナール氏は日産が新設する取締役会副議長に就くことになる。

 スナール氏は、焦点となっている日産の後任会長人事について「私は日産の会長になろうとは思っていない」と、記者会見で明言した。日産の会長ポストに関しては、ルノーが一歩譲る格好となった。

 覚書の正式な署名式は3月27日にパリで行う。オランダにある「ルノー・日産BV」と「日産・三菱BV」は機能を停止させる。

 日産とルノーのトップは、将来的な資本関係の見直しについて、最後まで明確に否定しなかった。「未来志向」を強調し、懸案の課題は棚上げ・先送りしたいとの思惑が透けて見えた。オランダから東京とパリへ協議の場は移るが、経営統合の火種は残ったままである。

ゴーン前会長の権力の源

ルノー=フランス政府、ゴーンが築いた“日産の利益収奪システム”の全貌の画像2
『日産独裁経営と権力抗争の末路』(有森隆/さくら舎)は、「ルノー・日産のアライアンス(戦略的連携)こそがゴーンの権力の源泉であり、ルノー=仏政府が日産の利益を収奪しつづけてきた実態を覆い隠す装置である」と指摘する。

 1999年3月27日、日産とルノーはアライアンスを締結した。ルノーは日産の第三者割当増資5857億円に応じ、日産株式の36.8%を取得するとともに、2159億円の新株引受権付社債(ワラント債)を引き受けた。総額8016億円の資金を投じ、日産を買収した。

 アライアンスは「利益ある成長と共通利益の追求」という共通理念を掲げた。

 2001年10月、両社は株式の持ち合いで合意した。アライアンスの第2ステージである。今度は日産がルノーの第三者割当増資を引き受け、ルノー株式の15%を取得。フランス政府に次ぐ第2位の株主となった。総取得額は21億6500万ユーロ(約2470億円)である。

 同時期にルノーは保有する日産のワラント債を普通株式に転換。この結果、出資比率は44.4%にアップした(のちにルノーが株の一部を売却し43.4%となる)。

 第2位の株主とはいえ、日産のルノーへの出資はわずか15%。しかも、これらは議決権のない株式だ。日産はルノーの経営になんの発言権も持たない。対して、当時、出資比率44.4%のルノーは日産の経営を完全にコントロールしていた。

 02年3月28日、共通戦略の決定とシナジーの管理を目的としてルノー・日産BVを設立した。ルノー・日産BVは、日産とルノーが株式を折半して所有する統括会社である。

 カルロス・ゴーン前会長は、日産とルノーが進める「アライアンスは、合併でも買収でもない第3の道だ」と自画自賛している。日産とルノーの関係は、「どちらかのためにどちらかが犠牲になるというものではない」というのが、ゴーン氏の主張だ。

 だが、これは真っ赤な嘘だとして、同書はこう糾弾する。

「日産は自らの経営戦略を統括会社に諮らなければならない仕組みになっていて、ルノーの承認なしにはトップ人事を含め、重要な経営判断はできない。将来、日産がルノーから離反しようにも、それを封殺できるシステムが、ゴーンの手で完成していたのだ。

 ルノー・日産BVは、ルノーによる日産の支配をより強固にするためにつくられた、ルノーによるルノーのための戦略的な組織なのである」

 ゴーン氏が日産のCEOを降りても、西川廣人社長以下執行役員まで53人全員の人事権と報酬を決める権限を握っていた。

 日産と三菱自が折半出資でオランダに設立した統括会社日産・三菱BVから10億円がゴーンに支払われていたことも発覚した。

「統括会社がゴーンの資金工作や報酬隠しの舞台として使われたのは、誕生の経緯からみて、至極、当然の流れである」(同書より)

 ゴーン氏は統括会社を自らの権力を維持する装置としてフルに活用した。その反省からだろう。3社連合は「合議」による運営に移行する。

 しかし、3社連合の歯車が噛み合わなければ、意思決定がかえって遅れることになる。

 日産社内に設置された「ガバナンス改善特別委員会」は3月末をメドに新しい企業統治体制や取締役会の構成などの提言をまとめる。だが、形ばかりの社外取締役を増やしても、経営陣への不信感を拭い去ることは簡単ではない。日産の経営体質は、一朝一夕には変わらないだろう。
(文=編集部)

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