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青山学院初等部“入学口利き”報道…名門私立小学校“入学”の腐りきった実態

文=深笛義也/ライター
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青山学院初等部“入学口利き”報道…名門私立小学校“入学”の腐りきった実態の画像1青山学院初等(「Wikipedia」より/あばさー)

「私立小学校での情実入学というのは、どこでもごく普通に行われていることです」

 青山学院初等部への入学に際して、300万円の寄附をし、同学校法人理事長や院長をレストランや大相撲の枡席で接待したが、結果は不合格。子どもの入学を果たせなかった親の告発記事が「週刊文春」(文藝春秋/3月21日号)に載った。

 これは特別なケースなのか。よく行われていることなのか。受験事情に詳しい業界関係者に聞いたところ、帰ってきたのが冒頭の言葉だ。

「これは有名大学の話ですけど、大学の教授が小学校の校長になって、口利きや不適切な入学を一切やらないことにしたんです。そしたら成人向けビデオ監督の長男が実力で入ってきたんです。父兄からの猛反発があって、先生に自殺者が出たりもして、教授は校長を追われました。それから入学方式は元に戻りました」

 ブランドを重視する小学校では、職業に貴賎はないとか、子どもは親の職業に関係ない、などという正論は通用するはずもない。

「やはり家柄がいいとか、素性のわかった親御さんのお子さんを集めたいということになります。慶應を出てエリートコースを歩んだり、起業して成功した人は、子どもを幼稚舎から入れますね。青山も同じで、そこの出身者の親御さんが子どもを入れたいという場合が多くて、学校側もOB・OGを大事にしますから入れますよね。『ああ、あの先生なら知ってます。懐かしいなあ』という感じで打ち解けたり、実際、教わった先生なら『お前の子なら、なんとかしなきゃな』となります。どんな教育が受けられるのかも知っているし、モンスター・ペアレントになることもない。そういう人たちの子どもで、ほぼ埋まってるのではないでしょうか。

 その場合、学校に寄附をすることがあるでしょうが、母校に寄附するのだから、なんらおかしいことはない。青山学院はミッションスクールですから、教会があります。教会に寄附するというのは、これもまた当たり前の行為です。その場合、寄附金と入学がバーターになっているかどうかは、阿吽の呼吸というところでしょう。

 青学出身者で子どもを青山学院初等部に入れたといえば、蓮舫さんとか、桑田佳祐さんがいます。あのくらいの成功者になれば、300万円くらいの寄附だとしたら、ほんのポケットマネーでしょう。もちろん、彼らのお子さんなら、学校側も歓迎するでしょう」

   今回報じられた1件では、どうやら子どもの親は青学出身ではないようだ。

「親御さんが出身者でなくとも、情実入学が発生することはあります。これが中学高校となると、テストで学力を測ることができますよね。たとえば偏差値30くらいの子が口利きで偏差値60くらいの学校に入ったら、授業に付いていけないから、周りからも裏口入学じゃないかと言われるし、自分でも親が金持ちだからそうなんじゃないかって気づくわけです。こんなにできないのは裏から入ったからだって自分で気づいて、負けてしまうんです。心の傷になって学校生活が楽しめなくて、本人のためにもなりません」

寄附金の位置づけ

 これから小学校に入るという幼稚園児の学力を測るのは難しい。入試はどのように行われているのだろうか。

「足し算引き算ができる幼稚園児もいるでしょうけど、それは小学校に入ればできるようになるので、そうした能力は問いません。ペーパーテストは、知能テストみたいなものです。子どもたちを遊ばせて行動観察をします。皆と仲良くできるかとかを見るわけです。リーダーシップを発揮していたら、この子はいいとなりますね。他の子を叩いたり、他の子の持ち物を取ったりするとダメということになります。でもそういう子でも入ることもあるので、そういう場合、寄附金が利いているのかもしれません。

 体力測定もあります。何もできないと困っちゃいますから。受験に向けて、平均台を渡る練習とかはしますね。面接も重要です。身なりとか話し方で、親が6年間授業料を払えるかどうかを主に見ているんです。途中で辞めるのではないかと思えたら、入れないですね。

 今回問題になっているお子さんも塾に通っていたようですけど、“受験する学校の先生が好きな子ども”を演じられるかどうかを、塾は教えます。“ここの学校の先生は、こういう子が好き”などという情報を、塾は収集してるんです。塾は学校の先生だけでなく、校長や教頭などとも知り合っているので、そこからコネができることもあります。『こういう子がいるんだけど、どうしても入りたいと言っている。寄附もするって言っている』などという話で、食事したりして、品定めするわけですよね。ペラペラ喋るような人物だと危ないですからね。

 もっとも、寄附金とバーターで入学したら、学校関係者と頼んだほうの双方が罪に問われます。もちろん入っちゃった人が、そんなこと口にするわけがないでしょう。今回は不合格になったから問題になったので、入学してればそのまま黙っていたでしょう」

   ブランド力の高い有名私立小学校は、情実入学者で占められているのか。

「『あそこの生徒は全部コネ入学者じゃないか』などと言われたら困るので、普通に入っている子も何十人かはいます。スタートラインはほぼ同じなので、中学高校みたいに本人が傷つくということもない。もちろん中学高校と経るうちにできる子は出てきますので、東大、東京藝大、東京工業大学などの難関大学に進む子もいますが、青学であれば7割以上はそのまま青山学院大学に進みますね。小学校6年、中高6年、大学4年、16年あればそれだけの収入が確保できるわけですし、何かの時にポーンと寄附してくれるかもしれないので、初等部入学の時点で親の経済力というのは気にしますよね」

小学生は“金のなる木”

 では、今回問題になった子どもの親は、官界、財界に人脈があり、経済力もあったようだが、なぜ不合格になったのだろうか。

「頼んだ人が悪かったのではないでしょうか。今はもう、世間の目が厳しいので、ブローカーが仲介するというのは、まずあり得ません。いたとしても、インチキなんです。金だけ取っておいて自分は何もしないで、実は実力で合格しているっていうケースです。落ちたら金を返すから、表に出ないんです。学校関係者と知り合いで、ちょっと会わせたりして何かしている演出をすればいいわけですから。今回の件も、別件の名目で、理事長や院長に顔合わせはしているので、それと似たケースですね。親御さんが頼んだ人物は、2014年まで青学の常務理事、常任幹事をしていたということで、今は青学アドバーザーとなっているらしいですけど、学校に対しての力はもはやなかったのではないでしょうか。

 おかしいのは、多額の金がかかる接待をさせていること、合格したら学校ではなく自分に3000万円をくれと言っているところです。欧米では寄附とバーターに入学するということは結構あることです。それは学校が潤えば施設が整って生徒や学生のためになったり、場合によっては貧しくて優秀な学生を受け入れられるという考え方からなんです。日本の学校でもそういう考え方もあるでしょうけど、学校への寄附じゃなくて自分の懐に入れてしまうというのでは、なんの大義名分もありません。接待というのもなんの意味もありません」

 昨年の文部科学省局長による息子の不正入学では、東京医科大にバーターで与えられたのは「私立大学研究ブランディング事業」への選定。助成されるのは、年間2000万円から3000万円。出所が自分の金ではなく税金であるのが悪質だったが、不正入学には数千万単位の金が動くものなのだろうか。

「2001年に早稲田実業学校初等部で、面接で300万円の寄附を求めたということで問題になりました。『新しい学校ですので、300万円ぐらいのものをいただければ運営が助かります』『入学されれば寄附はお願いできますね』という言い方で、実質上の要望ですよね。その時の奥島孝康理事長が、責任を被って辞めました。早実には昔、初等部がなくて、そこで慶應と寄附金の差が出ていました。親としたら、よほどのことがない限りエスカレーターで上がっていけるから、多少お金がかかってもしょうがないと考えてしまいます。小学生は“金のなる木”なんです」

青山学院の見解

 私立小学校の入学に関する口利きは、珍しくもなんでもないことらしい。今回の『週刊文春』の報道に関して青山学院に問い合わせたところ、以下のような声明を発表していることがわかった。

「週刊文春3月21日号に、『青山学院理事長の小学校300万円入学口利きを告発する』という見出しの記事が掲載されましたが、そのような事実は全くなく、当学校法人は、株式会社文藝春秋『週刊文春』編集部に対し、法的手続きを取るべく準備中です。その理由は、次のとおりです。

 第一に、当学校法人は、入学選抜の公正確保等のために、入学前の寄付金等は禁止しております。この事実は、初等部のホームページにも掲載されています。

 記事中に記載された告発者である『鎌田夫妻』と思われる方(以下、「告発者」という。)から、合計300万円が寄付された事実はあります。しかし、これは告発者が初等部の上記要請を無視して一方的に寄付されたものであり、当学校法人が要請したものではありません。また、当学校法人の理事長が300万円で初等部入試に関して口利きをした事実も全くありません。

 第二に、告発者が、『高級フレンチや大相撲の升席で理事長を接待した』との記事が掲載されていますが、当学校法人の理事長及び院長が告発者から高級フレンチや大相撲の升席で接待された事実も全くありません」

 300万円は返還されたのかを問うたところ、詳細は調査中であり、3月28までに調査結果をまとめるとのことであった。
(文=深笛義也/ライター)

深笛義也/ライター

深笛義也/ライター

1959年東京生まれ。横浜市内で育つ。10代後半から20代後半まで、現地に居住するなどして、成田空港反対闘争を支援。30代からライターになる。ノンフィクションも多数執筆している。

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