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『ドラクエ』3DCGアニメ映画化で早くも“嫌な予感”?“嫁=ビアンカ”問題が見所?

文・取材=後藤拓也/A4studio
『ドラクエ』3DCGアニメ映画化で早くも“嫌な予感”?“嫁=ビアンカ”問題が見所?の画像1「ドラゴンクエスト ユア・ストーリー」予告より

 今年の2月、スクウェア・エニックスは、日本を代表する国民的RPGシリーズ『ドラゴンクエスト』を、フル3DCGアニメーションで映画化すると発表した。

『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』と題されたこの映画は、『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』をストーリーの原案とした作品。総監督・脚本を映画『ALWAYS 三丁目の夕日』や『STAND BY ME ドラえもん』を手がけ、CG作品に定評のある山崎貴氏が務め、8月2日より公開される予定だ。

 映画のオフィシャルサイトには、『ドラゴンクエスト』シリーズの生みの親として知られ、今作にも原作・監修としてクレジットされている堀井雄二氏がコメントを発表。『Ⅲ』が社会現象を巻き起こしていた頃には、マンガ化や映画化のオファーを断ったこともあったそうだが、それから時間がたち、気持ちに変化が表れていたところで今回の話が持ち上がり、映画化にゴーサインを出したようだ。

 数あるゲーム作品のなかでも、特にファンの多い『ドラゴンクエスト』シリーズを、ヒット作を量産している山崎氏が映画化するとあっては、否が応でも期待が高まるところだろう。しかし、国産のフル3DCGアニメーション映画や、ゲームを原作、原案とした映画は、これまでヒットに恵まれてこなかったという事情もある。

 果たして、今作は興行的な成功を収めることができるのだろうか。映画やアニメ、ゲームなどを幅広く評論しており、著書に『文学としてのドラゴンクエスト 日本とドラクエの30年史』(コアマガジン)がある評論家・さやわか氏に話を聞いた。

素朴な人間ドラマを描いた『Ⅴ』に、山崎氏の作風は最適

 まず、今作の原案となった『Ⅴ』は、どのような物語なのか。

「タイトルに『天空の花嫁』とある通り、主人公の結婚を最大のイベントとしながら、親子三代の物語を描くという内容になっています。ゲーム機の処理能力が上がっていくのに合わせて、物語性を深めていった『ドラゴンクエスト』シリーズは、ファミリーコンピュータで発売した『Ⅳ』の時点で、すでに群像劇を描こうとしていました。そして、次に踏み出したスーパーファミコン用の『Ⅴ』では、主人公の人生はもちろん、親子三代にわたる人間ドラマ、親子三代の血脈という大きな流れを描く物語になっています」(さやわか氏)

 では、長大なシリーズのなかで、なぜ『Ⅴ』が選ばれたのだろうか。

「今回、総監督を務める山崎氏は、『ALWAYS 三丁目の夕日』などでもわかることですが、CGの使い方がこなれているというか、良い意味で変なことをやらない監督です。CGならではというような革新的な演出ではなく、CGを使いながらも、普遍性を持った、誰が観ても楽しめるようなクオリティの映像をつくり続けてきました。

 また、人間ドラマをきちんと描いてきた作家でもあります。『ALWAYS 三丁目の夕日』ももちろんですが、『STAND BY ME ドラえもん』では誰もが知る『ドラえもん』の物語を、CGを使いながら解体し、ドラえもんという存在との出会いと、のび太という人間の人生を、映画にしっかりと織り込んでいました。それは、いってしまえば単純というか、素朴な物語になっていました。

ドラゴンクエスト』シリーズが、なぜ国民的なゲームになったかといえば、普遍性のあるドラマだからです。龍や魔法使いが出てくる話でありながら、実は誰でも親しめるような物語になっているという特徴があります。

 今回原案となった『Ⅴ』も、ゲームだからといって決して奇抜な物語ではなく、主人公の人間としての生き方を描いた作品で、特に、素朴といっていいほどの人間ドラマになっています。ですから、単に『Ⅴ』が人気作だから映画化しようという話になったのではなく、素朴な物語を得意とする山崎氏の作風と親和性が高く、映画としてまとめやすいということで選ばれたはずです。

 こういった背景を読み解くと、今回の企画は土台が非常にしっかりしているという印象を受けます。堀井氏も、山崎氏が手がけるのならば、観客を喜ばせる作品になるだろうと感じられたので、映画化に踏み切れたのではないでしょうか」(同)

“誰を嫁にするのか問題”の答えは、ビアンカしかない?

 では実際の映画は、どのような内容になるのだろうか。劇場公開はかなり先だが、現在までにわかっている情報から予想してもらった。

「『Ⅴ』と聞いてファンなら誰もが思うのは、“誰を嫁にするのか問題”でしょうが、それはもう、物語の流れからすると幼馴染のビアンカしかないです。『Ⅴ』の物語を自然に読めば、必ずビアンカを選ぶような話になっているんですね。

 ゲームであれば、『これは私の選択だ』と思いながら物語を進めることができますが、映画となるとどうしても主人公を描くことになる。今作には『ユア・ストーリー』というタイトルが付いていますが、映画は主人公の人生を描く“自分”ではない“誰か”の物語なので、ある種“ユア・ストーリー”ではないものになってしまいます。

 ただ『Ⅴ』では、ゲームの主人公の選択とプレイする自分の選択が、うまい具合にクロスするように、物語が進行していました。簡単に言うとプレイヤーがプレイすることで物語世界を理解していく過程が、「自分が何者なのかを知る」という作品の重要なテーマと結びついていた。そのため、今作でもゲームのやり方をお手本にしながら主人公の選択を描きつつ、『ユア・ストーリー』というタイトルにふさわしい筋書きの作品になると思います。

 また、『STAND BY ME ドラえもん』に顕著ですが、山崎氏は原作から必要な要素だけを取り出して使うというつくり方をするので、今作も『Ⅴ』から物語だけを取り出し、再構築したような作品になると思います。つまり、ゲームの映画化というより、『Ⅴ』の物語を使った3DCGアニメーション映画としてとらえるべき作品になるでしょう。

『3DCGでつくる映画だから、ゲームを原作にしたんだね』というような理解をする方も多いかと思います。しかし山崎氏は、ゲームならではの要素やオマージュを、あえて映画に忍ばせるようなタイプではありません。ですから、あくまでも『Ⅴ』のストーリーの核である、主人公の成長や家族との関係、あるいは恋人との関係といったものを、映画内で描いていくことになると思います。

『Ⅴ』は、堀井氏ならではの王道のストーリー感と、普遍性を持った泣ける話です。ですから、その物語を上手く映画に落とし込むことができれば、ゲームをやらない一般層にも波及するようなヒット作になると思いますね」(同)

 とはいえ、3DCGアニメーション映画のヒット作は、『アナと雪の女王』や『トイ・ストーリー』といった欧米のものばかりで、『STAND BY ME ドラえもん』のヒットは異例とのこと。またゲームの映画化は、『バイオハザード』のように実写化で成功することはあっても、2001年に3DCGを駆使して公開された『ファイナルファンタジー』の大失敗が代表的で、興行的に成功したといえる作品が非常に少ないのが現状だ。

 映画のヒットは、興行収入20億円が一つの目安といわれているが、今作はそれを超えることができるのだろうか。

「興行収入が何億円になるのかという予想は、非常に難しいです。ただYouTubeで公開された予告第一弾の映像を見ると、鳥山明氏の絵の感じを生かした、近年の3Dグラフィック化されたドラクエのムービーに近い雰囲気になっています。これならファンには違和感なく受け入れられるのではないでしょうか。唯一気になるのは、原作のゲームだと、会話はテキスト表示が基本だったこと。しかし山崎監督が「キャラクターがボイスでしゃべる」ことをファンにも違和感なく感じさせる演出をしてくれれば、10数億円はいくのではないでしょうか。もちろん、20億円を突破して大ヒット、というふうになってほしいですが、まだまだ未知な部分があります。17~18億円まで行けば、20億円が見えてくるので、まずはそこが目標でしょう。

ドラゴンクエスト』シリーズのファンの力で、興行収入を10数億円まで持っていくことができれば、世間的にも注目が集まるはずです。そうやって大きな話題となれば、一般層の人々にも映画の魅力が伝わり、『私たちも楽しめる作品なんだ』と思ってもらえるでしょう。そうなれば、興行的には勝ち。ですから、まずは10億円台後半を狙ってほしいというのが、私の希望ですね」(同)

 普遍的な物語の魅力で、誰からも愛されてきた『ドラゴンクエスト』シリーズ。その映画化に際して、普遍的な魅力を持つ映画をつくってきた山崎氏と組んだことは、ベストな選択なのかもしれない。出来栄えが大いに期待できるこの映画が、どこまでの興行収入を伸ばすことができるのか、注目したい。
(文・取材=後藤拓也/A4studio)

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エーヨンスタジオ/WEB媒体(ニュースサイト)、雑誌媒体(週刊誌)を中心に、時事系、サブカル系、ビジネス系などのトピックの企画・編集・執筆を行う編集プロダクション。
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