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堀田秀吾「ストレス社会を科学的に元気に生き抜く方法」

Twitter、ネガティブな気分の際にそれをつぶやくと、通常の気分に戻るとの研究結果

文=堀田秀吾/明治大学法学部教授
Twitter、ネガティブな気分の際にそれをつぶやくと、通常の気分に戻るとの研究結果の画像1「Gettyimages」より

 昨今、電車に乗って車内を見渡してみたときに、ほとんどの乗客がスマホを見ていることに驚かされます。昭和から平成になって、もっとも変わった風景のひとつといえるでしょう。また、食事など人が集まる席でも、同席している人全員が、会話もせずにスマホを見ているなんていう光景も珍しくありません。

 もちろん、現代の生活において、スマホは自分の頭脳、そして生活の一部となっているわけですから、その有用性や必要性はいうまでもありません。必要な情報の受信・送信はもちろん、自分の好きな漫画や本を読んだり、好きな人とメールをしたり、ストレス解消のために役立てたり、ゲームをして暇を潰したり、いろいろと役に立つ、便利な魔法の機械として私たちの生活にしっかりと根づいています。もはや自分の分身といってもいいでしょう。

 スマホをどう使うかは、もちろん、個人の自由であることは間違いありません。ただ、スマホを何の目的で使うか、どう使うかということについて、そして私たちの精神衛生的な側面にはどのような影響があるかについては、少々検討する余地がありそうです。というのも、無意識のうちに私たちの心に少なからず影響を与えている可能性があることを示す研究がいくつかあるからです。

つぶやきは精神衛生上、悪くない?

 まずは良い話から。何か嬉しいことがあったとき。そして、ちょっと嫌なことがあったとき。ネガティブな気持ちになったとき、そういった感情の浮き沈みがあると、ふとSNSなどでつぶやきたくなることがあります。これ、実は精神衛生をコントロールする上では悪くないのです。特に気分がネガティブなときは、ぜひその感情をつぶやいてください。つぶやきには、ネガティブな気分を解消する効果があるのです。

 それを実証したのが、中国・アメリカ・オランダの研究者らが共同で、7万4,487人のtwitterユーザーを対象に行った調査です。ポジティブな気分のときに自分の気分に関してつぶやくと、1時間ほどで通常の気分に戻ります。逆にネガティブな気分のときに自分の気分に関してつぶやいた後は、10分ほどで通常の気分に戻り、それが1.5時間程度続くことがわかりました。いずれにしても、つぶやくことでポジティブな感情が上昇し、ネガティブな感情が減少するようです。また、女性のほうがその効果が強く観察されるとのことです。ですから、即効性のある気分回復法であることは間違いないようです。

長時間利用と鬱の関係

 ただ、少々ネガティブな面もあります。SNSなどのソーシャルメディアは、長い時間利用する人ほど精神的に不健康な傾向があるようです。たとえば、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのケリーらの研究(2018)によると、若者1万人以上(平均14.3歳)を対象に行った調査では、ソーシャルメディアの利用時間が長い人ほど鬱になる傾向が見られ、特に男性よりも女性のほうがその傾向は強かったとのことでした。

 また、ソーシャルメディアの利用時間が長い人ほど睡眠時間が短く、自己肯定感が低く、自己の容姿に自信を持てないなどの傾向がありました。ソーシャルメディアを使うと、こういったネガティブ・ループにはまっていくのは、なんだかわかる気がしますね。

 ネガティブな気持ちから回復するためにつぶやきをする時にも、他人の悪口を言ったり、批判などをしてばかりいるのはあまり好ましくありません。東フィンランド大学のネウヴォネンらが行った、622人を対象にした認知症の分析、および1,146人を対象にした寿命の長さの分析のなかで、高齢になると他者に対して不信感を抱く傾向がある人ほど認知症のリスクが約3倍も高いということがわかりました。そして、「信じる人は救われる」というのは、こんな部分でも真理なようです。確かに、何かと斜に構えて、疑心暗鬼にかられ、ネガティブなことばかり考えていると、心がすり減り、それが体に悪い影響を与えるのもわかる気がします。

 これらの事実からいえることは、ネットを使ったり、twitter等でつぶやいたりするのは決して悪いことではないということ。ただ、どんな時に、どれくらいの時間、何について発言するかには注意することが大切ということです。嫌なことがあったら、ちょこっとだけネットでつぶやく。でも、他人の悪口や批判は避ける。どうせなら、他人の非を探すより、自分のために小さな喜びや幸せをたくさん見つけていくような毎日を送って行きましょう。

 もちろん、そういうポジティブなこともつぶやきましょう。そういうつぶやきも、上で紹介した研究で気分を高めてくれる効果があるのは実証済みです。
(文=堀田秀吾/明治大学法学部教授)

Fan, R., Varol, O., Varamesh, A., Barron, A., van de Leemput, I. A., Scheffer, M., & Bollen, J. (2018). The minute-scale dynamics of online emotions reveal the effects of affect labeling. Nature Human Behaviour, 1, pp. 92–100.

Kelly, Y., Zilanawala, A., Booker, C., & Sackesr, A. (2018). Social Media Use and Adolescent Mental Health: Findings From the UK Millennium Cohort Study. EClinicalMedicine. 6, pp. 59-68.

Neuvonen, E., Rusanen, M., Solomon, A., Ngandu, T., Laatikainen, T., Soininen, H., Kivipelto, M., & Tolppanen A.-M. (2014). Late-life cynical distrust, risk of incident dementia, and mortality in a population-based cohort. Neurology, 82 (24), pp. 2205–12.

堀田秀吾/明治大学法学部教授

堀田秀吾/明治大学法学部教授

 専門は社会言語学、理論言語学、心理言語学、神経言語学、法言語学、コミュニケーション論。研究においては、特に法というコンテキストにおけるコミュニケーションに関して、言語学、心理学、法学、脳科学など様々な学術分野の知見を融合したアプローチで分析を展開している。執筆活動においては、専門書に加えて、研究活動において得られた知見を活かして、一般書・ビジネス書・語学書を多数刊行している。

Twitter:@syugo_h

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